第1161話 そんなものよ。

先だって出張から島に戻ってきた際、空港に金城くん(28・頭脳派)が迎えに来てくれた


「どうします?三姉妹のところにでも食べに行きます?」


三姉妹のところとは、まさに20代の三姉妹がおばんざい屋をしている店だ


最近金城くんが開拓した店で、三姉妹の真ん中に御執心なのだ


「あー、じゃあ軽く食べに行くか」


空港から15分、那覇の牧志にあるその店は、入口すぐがL字の底辺になるカウンターに、奥に10人も座れば満席になる


16時から開いているそうで、16時50分に着いて店に入ると、既に奥に6人ほど客がいた


ちょうど良い、下手に奥に入ってしまうと出られなくなるのだ


なので入ってすぐのL字の縦列端に金城くん、俺がL字の底辺(横列)に広く陣取らせてもらった


金城くんに適当に注文してもらい、食べ始めてから20分ほど経った


俺が三女(20)の就職相談に乗っている左手では


金城くんと、金城くんお気に入りの次女(23)がカウンター越しに話している


2人の横顔を見ている感じだ


次女「病みってる時ってやたらスピリチュアルな本を読んじゃう。『もし皆で井戸に落ちたとして、皆でワーって出ようとしたら上がれない。脱出できる人が脱出して、ロープを垂らす方が皆助かる』って」


金城「蜘蛛の糸みたいな話?それって◯◯(次女の名前を呼び捨て)が井戸に落ちるってこと?」


「しょっちゅう落ちてます」


「そっか・・・じゃあそんな時は俺が◯◯のこと引き上げてやるさぁ」


「えっホントですかぁ?」


「ホントだよ~!じゃあLINE交換しよう」


「あっごめんなさぁ~い私いまだガラケーなんですよぉ・・・(とカウンターからボロいダミー携帯を取って見せ)メールしかできないんですぅ・・・ホントごめんなさぁ~い」


そんな彼女は先程から、カウンターの下でスワイプしながらチラチラ画面を見ている(ガラケーにスワイプ機能はない)


俺「君のお姉ちゃんも徹底してるな笑」


三女「もっと言うとあれ(見せたほう)ガラケーじゃなくてリモコン笑」

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