第1150話 有名な実験

皆様も耳にしたことがあるかも知れない


とある大学の研究室。

四隅に学生が立っている。


時計回りに


角①にA、角②にB、角③にC、角④にD


部屋の明かりを消して真っ暗にする


Aは壁伝いにBの立つ②に歩き、Bにタッチ


タッチされたBは壁伝いにCの立つ③に歩き、Cにタッチ


タッチされたCは壁伝いにDの立つ④に歩き、Dにタッチ


タッチされたDは壁伝いにAの立っていた①に歩くのだが


居ないはずの「5人目」にタッチしてしまった、というもの


昨晩23時半に事務所に戻ってくると灯りが付いている


おや?

まだ誰かいるのか?


扉を開けて入り、応接横を通って中扉を開ける


ん?

誰もおらんぞ?


真っ暗な会議室を開け、電気を付けるが誰も居ない


戸締り忘れたんか?

とりあえず自席に書類を置きに行く


・・・と、入口の開く音がして誰かがやってくる


「あ、Tさんお疲れっす」


「お〜坂下やったんか」


「俺帰りますけど」


「おう、お疲れ様」


「あっそう言えば10分ほど前に『Tさん戻ってるか』って大場さんが・・・掛かってきました?」


「いや?こっちから掛けてみるわ」


「ではお先です」


「お疲れ様」


坂下を見送りながら、自席から大場くんに電話する


「お疲れ様。どうした?」


「あっTさん、いや、もう遅いし、良かったのですが・・・すみません」


「何?」


「◯◯の訪問、明日回るので大丈夫です」


「あっそう?悪いなぁ〜U(部長。海外出張中)の代わり全部押し付けて」


「いえいえ。ではお疲れ様です」


「おう、お疲れ〜」


さて。

俺も書類置きに戻っただけだし、帰るか。


事務所の電気を消し、共用廊下に出る


扉にカードロックを掛け終えたところで、事務所から電話の鳴る音が微かに聞こえてきた


ん?

大場かな?


丁度ロック掛けたところやのに・・・


再度開けようかどうしようか思案していると着信音が消えた


あ、なんだ切れたみたいやな

よし帰ろう・・・


翌朝。


出社してきた大場くんが俺のところにやってくる


「すみません、昨日」


「ん?何が?」


「あの後まだTさん居てらっしゃるかと思って電話しちゃって」


「あー、やっぱりあれ、お前やったん?ごめんごめん」


「いえ、何だか本当に、すみませんでした」


「ん?別にそんな謝ることないやん笑」


「いや、無言でガンッ!!て電話切られたから・・・」


「出てないぞ」


「え?」


「ん?」

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