第1122話 真相(ちょっと長いです)

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』


この題を見てピンときた方は映画通


SFの名作「ブレードランナー」の原作だ


主人公デッカードが、近未来のアンドロイド狩り専門の警察官、という設定は同じだが


原作ではバウンティハンター(賞金稼ぎ)としての顔も持ち、アンドロイド狩りで得た報酬で「生きた動物」を飼うのが夢だ


デッカードは今「ロボット羊」を飼っているが


生きた動物が稀少となった近未来は、本物の動物を飼うことがステータスとなっている・・・とまあ、そんな出だしだ


最終的にはデッカード自身が、実はアンドロイド(レプリカント)だったかも知れない・・・という謎のラストになっている


「自分は人間だと信じていたのに、実はアンドロイドだった」


信じて疑わなかったことが、実はそうじゃなかった・・・そんなエピソードで今までに1番、印象に残っているのは?


昨晩、飲みの席でそんな話になった


皆は


自分の国籍が違ったとか


知らない兄妹が居たとか


軽自動車は軽油で走ると思っていたとか、いろいろ挙げていたが


先週金曜、マレーシアから絵ハガキが届いて47年越しに真相を知り


あ〜!

そうだったのかぁ〜・・・


自分の鈍感さに苦笑いしたことろだ



小2のころから仲の良い女の子がいて


その子から


アホなことやめとき!

アホなこと言わんとき!


・・・そう言われたくて、アホなことばっかりやっていた


ちょっと度が過ぎて、呆れられたこともある


その彼女は現在、神戸のとある大病院の婦長をしている


恥ずかしいことを言うが彼女は俺にとって天使だ


華奢な女の子のくせに、俺には助けなど要らんのに、何かと俺を庇ってくれた


小5の時に「好きや」と言ったら10日ほど口を利いてくれなかった。


中2の時に告ったが、振られた。


それでもずっと、大好きだった。


彼女は、知り合った頃には既に父子家庭で、タクシー運転手をされていた父親が体調を崩されたため


高校から看護科に進み、卒業して働きながら専門学校で勉強していたが


19歳の時に父親が亡くなり


その葬儀にも参列したが、凛とした佇まいの彼女に、不謹慎だがやっぱり、変わらず好きだなぁ・・・と思った


親戚の入院見舞いに訪れた神戸の病院に、彼女が勤めていることを知っていたので


病棟を聞き、在席も確認できたので、まさか会えるとは思わなかったが35年ぶりに再会した


さすが婦長ともなると貫禄だ


体型も貫禄だ、80kgは超えてらっしゃるだろう


しかし彼女は、いつまでも俺の中で別格だ


何があったのかは聞いていないが、ずっと独身だそうで


「なあ、もうそろそろ俺と一緒になってくれん?」


結構真面目に、聞いてみた


「アホ言わんときや!ちゃんと仕事しい!」


それが昨年11月の話。


さて、俺はパチンコやスロットの類を一切しないが


7月のある朝


夢の中で俺はスロットをしていて、どうやら大当りで次から次とメダルが出てくるのだが


椅子から立つことが出来ずメダルは部屋に溢(あふ)れてゆき


そのうち首から下までメダルで埋もれてしまい、このままでは溺れて死ぬ・・・


死にたくない!

こんな死に方したくない!!


かずえちゃーん!!!!


何故か彼女の名を叫んで目が醒めた


たかが夢・・・馬鹿馬鹿しいとは思ったが「その後どう?元気にしてる?」とLINEを入れた


朝早いし迷惑だよな・・・何事かと思うよな・・・送ったあとで後悔していたら


「Tくんおはよう、どうしたんこんな朝から笑」


返事がきた!


「いや、先週関西寄ってて。帰る前に会いたかったな〜と思ったんやけど、忙しいかなと思って」


「あっ、私辞めたんよ病院。だからTくん、もしかして誰かから聞いたんかなってビックリした」


「え??辞めたん?!いつ!!」


「6月いっぱいで。ちょっと色々あってね。疲れちゃって」


待て待てこんな事ってあるのか?

いやマジで、こんな事あるのか??


これは俺への啓示でしかないじゃないか!!


「そうやったんか、マジ知らんかった。次戻るとき、会えない?」


「う〜ん少しゆっくりしたいから、こっちから連絡する。それでもいい?」


「わかった。待ってる。」


これが最後のチャンスだぞ、俺・・・


ところが。


世の中、そんな上手く行くわけない。

彼女は長年の夢だった、マレーシアに移住した


「そうでしたか〜。小2って言ったら7歳?47年を経て遂に完全決着、振られたわけですねぇ」


金城くんに慰め?られた


「なんか、そうやな・・・もし一緒に暮らせたら、お互いの47年分の話が尽きず、楽しかったろうになぁ・・・」


「いやいやTさん。Tさんには楽しいかも知れないけど、その方には苦痛でしかないかもですよ?」


「そうかもなぁ。勝手に都合良く考えてるよなぁ」


で、金曜日にマレーシアからハガキが届いたのだ


「言えなかったけどこういうことなの。でもありがとう。私もTくん好きよ」


パートナー(の女性)と写る、彼女が笑っていた


そっかーε-(´∀`; )

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