第925話 色んな奴がいる

特定されると御迷惑も掛かるだろうから、詳細は伏せるが


神戸の、とあるラウンジにお邪魔した


案内されたカウンター席の、3席あけて奥に


同い年くらいの男性が座っている


最初の一杯を作って貰ったところでママが


「Tさんブログ書いてんじゃん?・・・ブログじゃなかったっけ?」


「あ、まあ」


「あのね、この方もね、Yさんって言うんだけど、ブログ書いてらっしゃって」


そう言いながら、3席離れて座っているその男性を指差す


「本も出してらっしゃるのよ」


「いや〜本って言ったって自費出版ですけど」その男性はニコニコしながら俺に向かって会釈する


「へぇ〜凄いですね、ブログを本にするなんて」


「お客さんは・・・Tさん?どういうジャンルとかテーマとか、決めて書いてるのですか?」


「いえいえそんな、ただの日記ですわ」


「私はね、日頃面白いと思うことが結構あるので、すぐに貯まっちゃって。もう3冊出してるのですがね」


「面白話ですか、へえ〜もう3冊も!」


「Tさん、面白くなりたいって思ったことありませんか?」


そう言って男性は立ち上がり、勝手に俺の隣にきて座る


・・・なんやこいつ。


「面白く、ですか〜。なりたいですねぇ」


「あのね、私Twitterで連載してるんですけどね」


「あ、私もたまに書き込みます」


「えっ本当に?!私ね、お笑い塾やってるんですブログで。皆さんに参加してもらって、色々アドバイスさせてもらってるんだけど」


・・・アドバイス?


「どうですTさん、私の塾に参加されませんか?面白くなるチャンスですよ!」


「はあ・・・まあ・・・」


なにこの上から目線・・・

そんなに面白いのかアンタは?


「連絡先交換しましょう!」


そう言って男性が自分の携帯を手に持ったので


「あ、いや、私さっき充電なくなっちゃって」


「あっTさんこっちで(充電)してあげるわよ」とママ


アホか・・・

要らんこと言うな・・・


「あ、いや、もう、出なあかんから」


「えっ?!来たばっかじゃん!」


「うん、まあちょっと、1、2杯飲んだら出よう思って、顔出しに来ただけやから。」


「えーっ?ほんとにぃ?!」


ママは不服そうだ、それに畳み掛けるように男性が続ける


「Tさんちょっと待って!ママ、俺の鞄!」


「あ、はいはい!」


ママは男性の鞄を取ってくる


「あのですね、これなんですが」


男性は鞄を開けると、2冊のハードカバー本を出してきた


「これ私の本なんですよ。ちょっと今日、2冊しかないけど。参考になると思うので読んでみませんか?」


「えっ、今ですか?」


「いやいや、持ち帰っていただいて」


「いえいえそんな、貴重なものをそんな」


「2冊で2,200円です」


買わすんかい


「いや、ほんともう、出ます出ます」


釣り要らんからと言って1万円を置き、「ちょっと!Tさん!」とママが止めるのも聞かず店を出る


すぐにママが追いかけてきて


「ごめんTさん、何か気い悪くした?!」と謝ってきたが


もうここでええ、とエレベーターに乗り込もうとするママを制し


タクシーに乗ってホテルまで戻ってきた


気い悪いどころとちゃうわ。


イライラしながら、何となく覚えていた男性の名前と、本の題名を検索してみる


ああ〜確かにTwitterにもおる

フォロワーも1000人くらい居るなぁ


もしかして本当に面白い奴なのか??


早速、ブログを読んでみる


ブログは全て「天才◯◯の・・・」から始まっている


凄い奴やな

さっきの自信過剰な態度も頷けるわ


そして。


何話か読んでみた。


くっそ面白くなかった(#`皿´)

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