第846話 価値

自販機で缶コーヒーを買おうとして財布を見る


あ、1時間前にコンビニ寄ったときに小銭使い切ったんだ・・・と思い出し


しかたなく千円札を紙幣投入口に入れる


購入ボタンを押し、ガコンと商品が出るとともに


カランカランカランと釣り銭が落ちてくる


さっき小銭整理したのに・・・しぶしぶ返却口をまさぐる


あ~あ、こんなにいっぱい・・・


2回に分ければよかったのだが、1回で全部を掴もうとして


ちゃりーんころころころころ~


あ!100円が自販機の下に!


ええ~(~_~;)


まあええわ・・・自販機の下、汚そうやし・・・


そのまま立ち上がろうとすると


「諦めるの?」


えっ?と振り返ると、左後ろにおばちゃんが立っている


「諦めるの?」


「あっ、いや・・・」


おばちゃんは辺りを見回していたが、隣接するゴミ箱の周囲に落ちていた割り箸か何かを拾い


俺の横に座ると、自販機の下をカサカサと探り始めた


何回目かの探りで、ぴょいんと100円玉が出てくる


「あっ」


「ほら出たよ」


そういっておばちゃんは、なんだか黒いヘドロみたいなものが付いた100玉を拾い上げ、俺に突き出す


「あっいや、取っていただいたし、折角なんで・・・」


おばちゃんに向かって、"どうぞ"というジェスチャーをすると


「要らないよ!こんな汚いの!」


ぽてっと100円玉を落とすとおばちゃんは立ち上がり、プンプン怒りながら去っていった


俺はその100円玉を拾い上げる


こんなのどうぞなんて言われたら誰でも怒るわなぁ・・・


「ここに置いて」


「えっ?」


振り向くとおばちゃんがティッシュを手に拡げて立っている


「あっ、すみません」


そこに100円玉を置くとおばちゃんは


「ビキニ買ってくる」


そう言って改めて去っていった










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る