第825話 休暇申請

『私情のため有給休暇を申請します』


・・・は?


森くん(23)の不思議な申請書が回ってきた


直前に押印(承認)しているU部長に聞く


「なあこれ。おかしくない?」申請書を見せる


「ああ、森の申請すね。・・・ん?私情?」


見とらんのかい


「こんな使い方する?」


「いや~、なんなんすかね?」


ネットでググったらいきなり出てきた


『「情」は感情を表すから、「私情」は個人的な心の動きと捉えるのが一般的で、アンケートを取ってみると『私情により休みます』の使い方は間違っていると思う割合は全般の70%近くいた。しかしこれを20代に限定すると、「私情」を「個人的な事情」として使うことに違和感がないようだ。』


まさにドンピシャなコラム。年齢によって解釈が変わるとは。


宮里(25)がいたので、それとなく聞いてみる


「宮ちゃん、『私情により休暇申請します』って言い回し、どう思う?」


「えっ?ムカつくから休む!ってことですか?」


「おお!やっぱりそんな風に取るよなぁ」


「でもそれ、谷さんが言いそうですよね」


「あ~確かにな笑」


M嬢に、直近の谷やんの申請書を見せてもらう


あっ笑


休暇申請理由に「私情による。」と書いてある・・・


てか俺もU部長もスルーで承認してるし・・・ん?


こいつフリクションペンで書いとる(こすったら消えるやつ)


なんか消した形跡があるし。


消された部分を照明に透かしてみる


どうやら最初、「私情による」ではなく「私情のもつれ」と書いていたらしい


そしてその隣に「もつれるのは" 痴情 "」と


U部長の筆跡で書いて消した跡がある


正式書類に冗談を書いてもいいと思っているウチの連中って何なのだ・・・


もう私情により、解散。

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