第793話 折れた件④

子供の前で信号無視して、堂々と横断しやがってお前ら・・・


事務所裏の、小学校前にある信号


スクールゾーンも兼ねた道、親子連れや子供単体での通行も多い


車の往来が少ないとはいえ、子供の前だからこそ、信号無視しちゃいけないだろうが!!


それを堂々と渡りやがって。


"いい歳したオッサン共が、全く・・・"そんな俺の怒りを感じたのか


俺に背を向け遠ざかっていくサラリーマンの1人が振り向いたので、グラサン外して睨んでやる


かれこれ10日ほどヒゲを伸ばしているので、普段よりも威圧感があったのか


あるいはヤバいのに目を付けられた、とでも思ったのか


オッサン2人は示し合わせたように、小走りで去って行った


「おはよう御座います」


背後から声を掛けられ振り向くとU部長が立っている


「おう、お早うさん」


「ま~た今日は、"もろ"Tさんってシャツ、着てますねぇ笑」


「おー、これ貰ったんだよ、どう?」


「まんまTさんって感じっすわ」


Uくんは、黒地に赤い薔薇の刺繍入りシャツを着た俺にサムアップする


「ただ・・・さっき、グラサン外してサラリーマンに威嚇してましたよね」


「あ笑。見てた?」


「あの連中とすれ違いで前から歩いてきた親子連れ、Tさんを大きく迂回して逃げて行ったの、気付いてました?」


「えっ?うそ!マジ?!なんで??俺としたことが・・・やっぱ学校前やし白のTシャツとか着るべきやったかなぁ~」


「いやあの、Tさん?早くそのバイク降りて、背中の武器、下ろしたほうが」

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