第764話 指紋

某米軍基地の、入門パスの更新・受取りに行った


基地内は、それはもう管理が厳しく

車は全て30キロ以下で走らなければならない

少しでもオーバーするとすぐMPに捕まる


スマホは勿論使用禁止、車のドライブレコーダーも切らねばならない


以前、別の基地で


住宅街で遊んでいた外人の子供を「可愛いなぁ~」とパシャッと撮ったがために逮捕されたバカがいた


さて、今回は事前申請も済んでいたため新しいパスを受け取るだけだったのだが


何故かパス発給所にて顔写真を撮ることになった(事前にパス用写真を提出させられていたのに)


それはまあ、別にどうでも良かったのだが


次に「こちらに指紋を押しつけてください」とハーフの職員さんに促され


指先を読み取る七味の瓶くらいの大きさの円柱に、右手人差し指を乗せる


「・・・指紋が出ませんね?中指乗せてもらえますか?」


乗せる


「ダメですね・・・親指お願いします」


乗せる


「あれ~ダメですね・・・左手の人差し指お願いします」


ダメ。


左手中指も、親指も指紋が出ず、水に濡らせて再度乗せたのだが


「どうやら指紋が無いですね・・・」


マジすか?!


普段、筋トレで4キロのダンベルを持ちながらシャドーボクシングをしているのだが


ギュ~ッと握っているわけではないから、長年のシャフトとの擦れで削れて無くなってしまったのだろうか


自分の指紋なんてマジマジと見たことないし、それしか原因が思い当たらん


後ろで待っていた知り合いの男性が「実はテロリストじゃないの?」と笑ったとたん


建物内の職員全員の鋭い目線が一斉に俺を向いた


眼の前の職員に「いちおう確認ですが指先になにか塗ってます?」と聞かれる


「塗ってない塗ってない!」あわてて両手を拡げて突き出す


冗談でも基地内で「テロリスト」なんてワードを言ってはいけない・・・


(なんとか顔認証でパスを受け取ることはできたが)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る