第719話 エビ

おせちなどに入っている、海老のうま煮。


あの、頭と殻付きのままのやつ。


子供だと「むくの面倒だからいらな~い」って子は多いと思うが


ウチの金城くん。


「これって食べ方が今ひとつ分かんないんですよね・・・」とか言って絶対に食べない


アイツあんなこと言って剥くのが面倒くさいだけだろう・・・と皆で笑っていたのだが、先日


「面倒臭いんじゃないんですよ」


とあるお菓子を試食している時、唐突に本人がその理由を教えてくれた


「俺、エビに対してフードネオフォビアなんです」


「えっ?ふーどねお・・・なにそれ?」


「見た目で拒絶して食べたくなくなるという、人間の防衛本能。平たく言えば食わず嫌いですね」


「えっ、エビが?なんで?」


「だってあの触覚、足・・・虫っぽいでしょ」


「あ~それ言う人たまに居るなぁ」


「(火の通る前の)灰色のエビがですよ、もし地上の生物として、そこらの草木に止まって蠢(うごめ)いてたら・・・食欲湧きます?」


「それは・・・いや実は、ぶっちゃけ言うと俺もシャコがダメなんよ」


「虫っぽいからですか?」


「虫っていうか・・・ヤスデとかムカデっぽくない?」


「うげ・・・想像したくないです」


「ところでこれ、美味いね」


「いけますね~なかなか」


昨年、琉球黒糖から発売された「コオロギ黒糖」


ここ数年、全国レベルで食材としてのコオロギ養殖が増え、研究が進んで商品も多い


「それこそコオロギってエビの味らしいで?」


「そうらしいですね。でもエビのあの姿はダメです」


「そうか。頑(かたく)なやな笑」


・・・とは話を合わせたけれども。


昨年の秋口だったか、宮里くんの主催する合コンに金城くんも参加していて、途中、料理にガーリックシュリンプが出てきたそうだ


『この、エビを噛んだときの、良い頃合いでプチっと切れる歯当たり・・・女の子ってたまに(と女性陣を見渡し)、無性に何かに噛みつきたい時、あるでしょう?あるよね?このエビ噛んでみて。エクスタシーよ?(金城:談)』


宮里「こいつ、なに格好付けて・・・と思いましたけど、あんなにオクテだった金ちゃんがそんなこと言えるようになって。あいつ、エビ大好物だから追加してましたよ」


フードネオフォビアとか難しそうなこと言って何となく人を納得させる、いつもの金城くんの手だ。


結局剥くのが面倒くさいだけだ。

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