第636話 不意を突かれる

馴染みの小料理屋の仕込みを手伝うことになり


頼まれ物の買い出しに、スーパーへと赴いていた


精算が終わり、預かってきたエコバッグに食材を詰めていると


60代の作業服姿のおっさんが、俺の右手に買い物カゴを置く


併せて買ったレジ袋を開こうとするのだが、指先がカサカサなのか、一向に開かないようだ


俺はさり気なく注視していたが、レジ袋はぴったり張り付いたまま開こうとしない


おっさんは棚の上を見渡す


・・・が、水気を含んだスポンジのようなものは、このご時世だから回収されている


埒があかないと思ったのだろう・・・


おっさんは左手の人差し指を、アゴの下からマスクの内側に忍ばせる


あ、ツバ付けようとしているのか?


ところが次の瞬間


おっさんの付けていたマスクがポンと外れて前に飛び


人差し指を咥えたままのおっさんと俺との目が合う


どれだけ笑いを堪えるのが大変だったか・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る