第623話 島ぞうり

我々、普段は年がら年中、島ぞうり(という名のビーサン)だ


安いし。

今時のは彫刻加工もされたりしてオシャレだし。


ただ、定期的に買い替えないと、底がツルッツルになって雨の日は氷上くらい滑る


あの、ぺたんぺたんという音が消えたら要注意(替え時)だ


昨年8月。


島ぞうりを履いたまま大阪に飛び、午後3時、炎天下の裏路地をぺたんぺたん歩いていたら


明らかに目の前の道路が真新しいアスファルト・・・


キャリーバッグを引いたまま、警戒もせず渡ろうとして


アスファルトに着地した瞬間、左足ぞうりが溶けた道路に引っ付き


あっ!とつんのめって踏み込んだ右足ぞうりも引っ付き


バランス崩して倒れ


付いた右手に溶けたアスファルトがネチャッと付き


「熱っつ?!熱っつうぅぅ!!」


悶絶している横を近所のおばちゃん達だろうか、2人組が通りがかり


「お兄さん何してはるの?遊んではるの?人目あるし止めといたら?」と言われたので


「いや、草履が引っ付いて・・・」と状況説明すると理解してくれたようだ、2人がかりで引っ張って俺を立たせてくれたは良いが


ぞうりがアスファルトに強力接着したまま、引っ張っても剥がれない


替えの靴なんぞ持ってきてなかったので、どうしたものかと、道路が熱いから交互に足を浮かせながら裸足で思案していると


おばちゃんの1人が「お兄さん、ちょっと待っててや」と


わざわざ家まで戻り、数分後、つっかけを持ってきてくれた


「ほら、これ履いていって良いよ」


何と親切な・・・(ToT)


何度も何度も御礼を言い、その場を離れたのだが


いかんせんおばちゃんの履く、指の出ないタイプの焦げ茶のつっかけ。


更に俺の足26.5に対してレディースの24くらいしかない。


踵がはみ出た焦げ茶のつっかけを履き、すれ違う人々に不審がられながら、炎天下の街を歩くこと40分・・・


通りにABCマート(靴屋さん)を見つけたときは、涙した・・・


その後10月に入り大阪を訪問した際、あの島ぞうりを捕られた路地裏を歩く機会があったのだが


・・・どうやらあの後、補修されなかったようだ


チャイニーズシアターのように俺の右手と草履の跡がついていた

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