第535話 雨の日
沖縄は、ゴールデンウィークに入れば梅雨入りも近い
そして梅雨が近づくと、ふと思い出す親子がいる
大雨の中、歩道を、傘を差した者同士ですれ違う
斜めに避けたり、高く上げたり。
そういった気遣いのできる方もいれば、傘の骨の先、露先(つゆさき)というのかな、
あれをバンバン対向者に当てながら
全く知らん顔で将棋の歩みたいにまっすぐ進むおばちゃんもいる
さすがに子供みたいにブルンブルン回して雨を飛ばす大人は居ないだろうが。
傘を開閉する部分・・・「下ろくろ」というらしいが
左手で傘を差し、右手で「下ろくろ」を押したり引いたりしながら、傘の開き具合を調整し
対向者に当たらぬよう、絶妙にすり抜けていく人もいる
そのかわり多少、自分が雨の犠牲になっているようだ
そんな気遣いをして傘を差す方もおられるのだ
俺もただバサっと傘を拡げているだけでなく、そんな気遣いを見習わねば。
そうこうして大雨の中、歩道で信号待ちをしていると、更に雨脚が強くなってきた
ふと左手後方を見ると
若い母親が、どうしてもカバンの中身をチェックしたかったのだろう、
「◯◯ちゃん、ちょっと傘持ってて!」と
4~5歳の、黄色い水玉の雨ガッパを着た男の子に、
自分の持っていた傘を託しつつ、その場にしゃがむ
「まっすぐ持っててね!ここ、押しちゃダメよ!」
そう言われて折り畳み傘を持たされた男の子だが、大人用だから重くてうまくバランスが取れない
「ほら、しっかり持っててね!」
子供に持たせた傘の下で、しゃがみながら大急ぎでカバンの中身を探る母親
しかしどうしても傘が重くてバランスの取れない子供が、両手でシャフトのあちこちを持ち直しているうちに
バシャン!!
押しちゃダメと言われた、自動折り畳みボタンを押してしまった
「ああ~~!!もう~~!!」ビッチャビチャの母親。
慌てて子供から傘を取り、開き直す
だが滝のような雨脚に晒された彼女は、もう全身濡れネズミ
一瞬、呆然としていた彼女だが・・・ビッチャビチャな自分を見渡したあと
同じく呆然と、大変なことをしてしまったと泣きそうな顔で自分を見上げている子供に向かって
「どうだ~!はっはっは~!!」
腰に手を当てて大笑い
子供も釣られて、泣き顔が笑顔に変わる
貴女もう、誰より最高だ・・・
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