第478話 メシア

とあるショッピングモールに寄った


1Fから6Fまで直行するエレベーターに乗り込む


ソーシャルディスタンスの一環で、エレベーターの4隅には足のマークがあり


すでに3隅、乗客が立っている


俺が左奥に立てば4隅が埋まるので、このエレベーターは出発する


俺が乗り込み、扉側に向きを変えると同時に扉が閉まりかけたのだが


そこにスッと5人目のサラリーマンが入ってきた


あっ!という顔をしたそのサラリーマンだったが、扉は閉まってしまう


・・・まあ、仕方ないしそこまで気にする必要も無いと思ったのだが(他の乗客3人も特に反応はない)


そのサラリーマン、エレベーター中央に立つと


“ピタッ”と


まるでフリーズしたかのように、両腕を胸の前でクロスし、微動だにしなくなった


例えるなら4人の使徒に囲まれたメシア


あるいはオスカー賞のトロフィーといった感じだ


その、直立不動の微動だにしなさ加減が面白すぎて、俺は必死に笑いを堪えていたのに


左隅の男性の耐え切れない笑い声が「ふふっ」と漏れてしまった


前方2隅の乗客がそれに反応しチラッと振り返ると、そこにはオスカー像のような男性


その2人も笑ってしまい、中央のメシア、いやオスカー像は、でなくサラリーマンは


自分が笑われたと気づき、両腕を胸でクロスしたまま目を瞑った


何故に貴方は敢えて、そんなポーズをチョイスするのか・・・


考えれば考えるほど可笑しくて、遂に俺も吹き出してしまった

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