第170話 そこまで大らかじゃない。
俺は、ほぼハゲなのだが
辛うじて残った前髪をディップでオールバックに持っていき
そこにVO5をブワーッとかけてガチガチにセットしている
どんなに強風が吹こうが、一糸乱れることはない
ところが炎天下で汗をかくと最悪・・・ベッタベタになる
それでも頭に触れず、クーラーの効いた部屋などで乾くのを待っていると元には戻るのだが。
昨年の8月初旬。
外回りでダラダラ汗をかいたあと車に戻り、15分ほど高速を走らせて事務所に戻ってきた
自席で書類に目を通しているとU部長が戻ってくる
U部長の席は俺の目の前だ
「お疲れさまです」
「おっ、お疲れー」
「10月の◯◯さんの件ですが、先方もその日程で宜しくお願いし・・・」
・・・ん?なんだよ?
話の途中でU部長が止まったので顔を上げると
「あっTさん、ちょっと下、向いてもらえます?」
ん?下を向く
「Tさん、あの、頭でアリが固まってます2匹。取っていいですか?」
「アリ?」
「あっ割り箸あったかなぁ・・・ちょっと待ってください」
U部長は自分の机の引き出しをゴソゴソしていたが割り箸が見つかり、袋から出す
「もういっかい、下向いてもらえます?」
「あっ、はい。」
炎天下で街中を歩いているときに、街路樹あたりから落ちてきたのだろうか
ベタッとくっついたあと乾いてしまったのだろう
「けどこれ、アリだから良いですけどセミだったら大爆笑ですよ」
気付くわ。
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