第149話 パン争奪戦

以前住んでいた那覇のマンションから、10分ほど歩いたところにパン屋があって


歩いても知れてる距離だが、毎朝カゴ付き自転車でバタールを買いに行くのが日課だった


ある日、夜に知人が数名来ることになっていたのでバタールを5本買った


ちなみに皆様ご存知かも知れないが


バゲット 70〜80cm

バタール 40〜50cm

フィセル 30cm


長さで呼び名が変わります。


さて、5本のバタールを、いつものように前カゴではなく後ろのカゴに載せた


というのも後ろカゴには、すだれのような蓋が付いていたので、パンははみ出て伸びていたが、押さえにはなるかな〜と思ったのだ


ここまで書くとオチがバレバレだが、マンションの前まで戻って自転車から降りたところで、パンが4本しかない事に気付いた


あれ??落とした?!


さっき一度、ガタンと段差があったかも・・・だとしたら直ぐそこだ


俺はマンション脇に自転車を立て掛けると、4本のバタールを抱え、今しがた通ってきた道を小走りに戻る


日陰になった道の脇に、それは落ちていた


遠目から見るとまるでツチノコだな・・・ん?なんだ?サワサワ動いてないか??


少々気味悪かったが近付いてみる


朝7時35分。人通りは無く、道路にはパンと俺だけかと思ったら・・・おい!


たかだか数分の間にどれだけ群がるのだイソヒヨドリ!・・・いや、名前のわからない小鳥もいる


しかしバタールの表面が硬いから、鳥たちも必死に突っ突きながら四苦八苦している


だからあんなグラングラン動いてるのか・・・う〜ん、俺はあれを、せめて道端へと寄せるべきか?


いや、もう放っておこう(駄目なんだけど)


とその時、俺の右肩にズンと何かが掴まり、右脇に抱えていたバタールの袋が引っ張られた


な、なにっ?!


それはあっという間にバタールを一本引き抜くと、ばさばさっ!と飛び立った


カラスだ!

虎視眈々と上空から狙っていたのだ


唖然と見上げる俺から悠々と逃げるかに見えたカラスに、数羽のカラスが体当たりした


バタールは道に落下する


結果、前方ではカラスによるバタール争奪戦、後方ではイソヒヨドリら小鳥の争奪戦が繰り広げられることになった


お前らも必死なんだね・・・


2組の争奪戦を放ってマンションに戻ろうとする俺を、数匹の猫が睨む


君らまで狙ってるの?

猫はパン食べるのNGなんだぞ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る