第72話 T.K.O

「サンテ40とかスマイル40とかゴールド40とか。買う時に抵抗あるから50シリーズ出して欲しいんですよね」


飲みの席で半分冗談で言ったところ


「こんまい(小さい)人やなあんた・・・」


70代のお客さんに真剣に笑われた


「わしなんか『す』でいけるわ」


「す?お酢ですか?!そんなことしたら目がもろもろに」


「牛乳やないねんから。あんた、醤油くらい行かな」


「醤油!目が色付きますよ?!」


「そや。カラコンやなぁ」


「カラコンなんて御存知なんですか?・・・いや、御存知ですかって失礼ですけど笑」


「嫁が毎日しとる」


「え!奥さん毎日カラコン??」


「そや。胸なんかこんな(と両手でおっぱいを現し)やで」


「ん?シリコンすか?」


「あぁ、それやそれや」


「じゃあ私もシリコン注入で!こんまい男卒業しますわ!」


場を盛り上げたい俺はお客のくだらない話に付き合った


翌朝。


そのお客を連れて関空から沖縄に飛ぶため、吹田(大阪)の御自宅へ朝7時に迎えに行った


「あら〜わざわざありがとう御座います〜ウチの主人、宜しくお願いします〜」


おそらく旦那と同じく70代だろうが、峰不二子のようなスタイルの奥様に出迎えられる


奥からキャリーケースを引っ張ってやってきた旦那が


ニヤニヤしながら奥様の胸を指差し「シリコン、シリコン」と俺に言った瞬間


ゴンッ!


奥様の掌底というか平手打ちというか、旦那の左アゴを捉える


一瞬クラッとした旦那が「何すんねん!」と怒鳴るが、奥様はにこやかに


「それではウチのバカを、宜しくお願いします〜」


そう言ってもう1発、旦那のアゴを叩いた


「ちょっとホンマにやめろ!」


そう言いながら玄関の外にエスケープする旦那


それから1時間半後。


先ほどの玄関での攻防に触れる事なく、我々は関空に着いたが


お客はアゴをしきりにさすっている


心なしか腫れているような?

いい音したもんなぁ・・・笑


12時半、那覇に着く頃には確実に腫れていて、本人も痛いというのでそのまま整形に向かうと


アゴが折れていた

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