第95話 意外な組み合わせ
店に到着した私達は2人で店内の飾り付けを行っていた。
「アンジェラ、このガーランドは何処に飾ればいいかな?」
脚立に登ってガーランドを手にしたデリクが声を掛けてきた。
「それじゃ、真ん中の天井部分に垂れ下がるように取り付けてくれる?」
「オッケー」
デリクは釘をカンカンと打ち付けてガーランドの飾り付けを行っている。そして私は本日新しく作って持ってきたがまぐちポーチに値札を取り付けていた。
すると彼が言った。
「こうして2人で店の開店準備をしているなんて夢みたいだな〜。アンジェラは前世で自分の店を持つのが夢だったよね」
「ありがとう…覚えていてくれたのね。でも…嬉しいわ。前世の記憶を共有しているのが…貴方だったから」
値札をつけながらポツリと言った。
「僕も嬉しいよ。君があんなに突然に病に倒れて死んでしまうとは思わなかったから、こうしてまた会えるなんて…まだ信じられないよ」
その言葉で私はある事実に気がついた。
「ねぇ、そう言えば…どうして貴方は死んでしまったの?それに変よね?私の方が先に死んでしまったはずなのに…どうして貴方の方が歳上なのかしら?」
「う〜ん…何故僕の方が年上なのかは分からないけれど…でも、それは前世でも僕のほうが年上だったからじゃないかな?」
「そうかも知れないけど…。それより、貴方はどうだったの?寿命は全う出来たの?あの後、誰かと結婚して家庭は持てたの?」
「…僕は君が亡くなった後…誰とも結婚はしていないよ。君が亡くなって数年後…仕事帰りに突然心臓が苦しくなって…それきりだったんだよ。ひょっとすると心不全だったのかもしれない」
「…そう…だったの…?」
「でも、意識が無くなる時…ひょっとするとこのまま死んでしまうんじゃないかなと思ったよ。そして、もし生まれ変わりがあるのなら、もう一度君に会いたいって思ったのは確かだよ」
「デリク…」
思わずその言葉に感動し、胸が熱くなってしまった。
「だから君にこの世界で再び再会できて僕はとても幸せだよ。さて、それじゃ次は何をすればいいかな?」
ガーランドの飾り付けを終えたデリクが尋ねてきた。
「ええ、それじゃ次はね…」
こうして私とデリクはお昼になるまで店内の飾り付けを行った―。
*****
12時―
私とデリクは彼が予約したというレストランへ向かっていた。
「今から行くレストランはね、パスタ料理が専門のレストランなんだよ」
デリクが説明してくれる。
「本当?私パスタ料理好きなの。楽しみだわ」
「やっぱり。前世での君もパスタ料理が好きだったよね?あ、着いた。ここだよ」
デリクが連れてきてくれた店は赤レンガで作られたおしゃれな外壁のレストランだった。
「まぁ…可愛らしい建物ね」
「うん、そうだね。それじゃ中へ入ろうか?」
「ええ」
そしてデリクは扉を開けた。
カランカラン
扉を開けるとドアに取り付けたドアベルが店内に鳴り響き、すぐにウェイターがやってきた。
「いらっしゃいませ」
「すみません、予約していたデリク・コンラートですが」
「ええ、承っております。こちらへどうぞ」
ウェイターは私達の先頭に立って、店内を歩いていく。歩きながら周囲をチラリと見渡せば、店内はかなりお客で椅子が埋め尽くされている状態に近かった。
私達は案内された窓際の一番奥の席にすわり、本日のお勧めランチを2人分注文するとデリクに声を掛けた。
「このお店…とても混んでるわね」
「それだけ人気があるって事だよ」
「ええ、そうね…」
私は改めて店内をぐるりと見渡し…次の瞬間驚きで目を見張った。
そ、そんな…嘘…。
「アンジェラ?どうしたんだい?」
デリクが私の様子がおかしいことに気付き、声を掛けてきた。
「デ、デリク…。あのテーブル席に座っている人達…」
「え…?」
デリクは私の視線の先を見て…声を震わせた。
「う、嘘だろう…?」
私達の視線の先にいたのは…ニコラスとパメラ、そしてニコラスの母の3人で仲良さげに食事をしている姿だった―。
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