第70話 驚く親友

 翌日―



「ありがとう、ジムさん」

 

馬車を降りた私はいつものように学園の正門まで送り届けてくれたジムさんにお礼の言葉を述べた。


「いえいえ、とんでもありません。今日は何時にお迎えに伺えば宜しいですか?」


「そうね、今日は週の1日目だから学校が終わるのが早いのよ。だから14時半に迎えに来てくれる?」


「はい、かしこまりました。それで帰りは何処かへ寄られますか?」


「何処にも寄らないわ。今週は家で縫い物に専念するから」


「そうですね。お店のオープンまでだいぶ日にちが迫ってきていますからね」


「ええ、それじゃ待たね」


「はい、行ってらっしゃいませ」


「行ってきます」


頭を下げるジムさんに手を振ると他の学生たちに混じって校舎へと向かった―。



「おはよう、アンジェラ!」


校舎に入ったところでペリーヌが声を掛けてきた。


「あ、おはよう。ペリーヌ」


笑顔で挨拶を返すと、ペリーヌが興奮気味に尋ねてきた。


「ねぇねぇ、アンジェラ。他の学生たちが騒いでいたけど、ニコラスが退学したって話、本当なの?!」


「えっ?!もう知れ渡っているのっ?!」


まさか昨日の今日でニコラスの事が他の学生たちに知れ渡っているとは思いもしなかった。一体話の出どころはどこなのだろう…?


「え、ええ…そうなのよ。少し話は複雑なのだけど…ニコラスが退学になったのは多分私が原因だわ」


2人で並んで廊下を歩きながら私はため息をついた。


「え?どういう事なの?」


ペリーヌが目を見開き、尋ねてきた。」


「ええ、実はね…」


そこまで言いかけた時―。


「アンジェラ様」



不意に背後から声を掛けられ、ペリーヌと2人で振り向くとそこにはパメラの取り巻きの2人の女子学生たちが立っていた。確か彼女たちは…。


「あ、あなた達は……グレタさんと…イレーヌさんだったかしら?」


「はい、私がグレタでこっちがイレーヌです」


1人の女子学生が返事をする。

すると何も事情を知らないペリーヌが早速彼女たちを睨みつけると怒りを押さえた口調で2人に言った。


「何よ、あなた達…。まだアンジェラにいいがかりをつけに来たの?」


「い、いえ!違いますっ!」

「私達、お礼を言いに来たんですっ!」


2人の女子学生は必死に首を振って否定する。


「お礼?一体どういう事なの?」


ペリーヌが不思議そうな顔で私を見た。


「ええ、その事も含めてペリーヌには色々説明したいのだけど…話すと長くなるからお昼休みに話してあげるわ」


「本当ね?アンジェラ。必ず話してくれるのよね?」


「ええ、勿論よ」


すると2人の女子学生たちが口を挟んできた。


「あの、私達もご一緒させて下さい!」

「アンジェラ様とゆっくりお話がしたいんです!」


「ええっ?!何故あなた達がアンジェラと一緒に食事を取りたがるのよ。大体、パメラはどうしたの?彼女と一緒に食事を取ればいいでしょう?」


すると彼女たちが口々に言った。


「パメラの事ならもういいんです!私達にはもう関係ありません!」


「ええ、だって彼女は逮捕されて学校も退学扱いになってしまいましたから」



「え…えええええっ?!」


廊下にペリーヌの驚きの声が響き渡ったのは…言うまでも無かった―。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る