第51話 パメラの破滅 後編
「そ、そんな…!嘘よっ!ニコラスが私を捨てるはず無いわ。そ、そうよね…?お母さん…」
震えながらパメラは母親に訴えるも、パメラの母は視線をそらせてしまった。恐らく娘の罪に巻き込まれたくなかったのだろう。
「知らない…。私は関係ない…わ…全部…お前が勝手にやった事でしょう…?私を巻き込まないで頂戴」
「お、お母さんっ!私を見捨てる気っ?!」
「…」
しかし、パメラの母は返事をしない。
すると今まで傍観していたシビルの父親が口を開いた。
「パメラお嬢さん…うちの娘はあんたに命令されて貴族の御令嬢から物を盗んだそうじゃないですか?言う事を聞かなければ私をクビにすると脅したそうですね?娘は停学処分になってしまったんですよ?何て酷い事をしてくれるんですかっ?!」
「そ、それは…で、でっち上げよ!だ、だいたい私達は…そう、親友同士だったのよ!」
パメラはガタガタ震えながらも反論する。
「何がでっちあげだ!うちの娘が言っていた!親友とは名ばかりだって!まるで下女のような扱いを受けていたと昨夜白状したよっ!」
「ああ、今迄あんたに命じられて嫌がらせをしていた貴族令嬢の方に謝罪したいと娘は言っていた。貴女だったのですね…?娘に代わり、謝罪させて下さい。申し訳ございませんでした」
その人物は私に頭を下げてきた。
「いえ…事情は分かったので…もう結構ですよ。どうか頭を上げて下さい」
「あ、ありがとうございます…」
私の言葉に男性はお礼を述べてきた。
「よし、話はまとまったな」
父は私達を見渡し、最後にパメラに告げた。
「確か…君はパメラだったか?これらの件は全て警察に報告しておく。明日、警察がウッド氏の元へ来ることになっている。君も恐らく父親同様、警察から事情聴取を受けることになるだろう。決して…逃げようなどとは考えないことだ。逃げれば罪が重くなるだけだからな。正直に話して罰を受けることだ」
「そ、そんな…私はそこまで悪いことなんか…していないのに…?」
とうとうパメラは地面に座り込んでしまった。
「ウッウゥウゥ…」
そしてついに泣き崩れる。そんな娘を冷淡な目で見つめるパメラの母親。
その様子を見ていた父が言った。
「夫人…貴女はまるで自分には関係ないとでも思っているようですな?」
「え?ええ。当然ではありませんか?」
夫人は突然自分に話が振られたのが驚いたらしく、声が上ずっていた。
「貴女の事も警察に報告しておきますよ」
「な、何ですってっ?!」
「貴女も私の娘に対して横柄な口を聞いていた。それに仮にも伯爵家の令息を呼び捨てしておりましたね。この事も警察に伝えておきます。まぁ貴女の場合は注意勧告のみになるかもしれないが、きっとコンラート伯爵家にはこの話がいくと思いますがね」
「…っ…!」
パメラの母は少しの間、無言で震えていたが…。
「パメラッ!全てお前のせいよっ!」
ついに娘を叱りつけた。
「お前が調子に乗って余計な事をしたばっかりに…こっちにまでとばっちりがきたじゃないのっ!農園経営を手放さなければならなくなったのも…全ての元凶はお前のせいよっ!」
パメラの母は吐き捨てる様に言う。
「何よっ!私のせいばかりにしないでよっ!」
パメラは泣きながら母親に言い返す。
「何ですってっ?!」
「お前なんか産むんじゃなかったっ!」
「こっちだってあんたみたいな母親願い下げよっ!」
そしてついに醜い親子喧嘩が勃発してしまった。
「何よっ?!」
「やる気っ?!」
互いに罵り合い、つかみ合いをしている母娘を白い目で見ながら父が言う。
「全く…見るに堪えないな」
「ええ、その通りです。もう僕たちも行きましょう」
呆れた様子で親子喧嘩を見ていた兄が声を掛けて来た。
「そうですね。お兄様。私達は皆忙しい身ですから」
「それじゃ…あの2人の事は君達にお願いしてもいいかな?何、警察が来るまでどこにも逃げられないように見張っていればいいから」
父が労働者達に言うと、彼等は返事をした。
「はい、お任せ下さい」
「ちゃんと見張って置きます」
「どこにも逃がしませんよ」
「よし、それでは帰ろうか?」
「「はい」」
父の言葉に私と兄は頷く。そして私達は醜い親子喧嘩をするパメラ達を残し、馬車へと向かった。
いずれにせよ、パメラもパメラの家族ももう終わりだろう。
なにしろパメラは喧嘩を売った相手を間違えたのだから―。
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