第29話 1週間の停学処分
「まさか盗まれた人物が盗んだ相手を連れて来て罰して下さいと言って来るとは思わなかったわ?でも…本当にいいの?彼女は命令されて貴女の私物を盗んだだけでしょう?それに返してもらったんだし…普通そういう場合は大目に見てあげると言うものだとばかり思ってたけど?」
女性教諭は私を見た。
「はい、本来であればそうしたいところですが…実は彼女に私の私物を盗ませた人物は以前からずっと私に嫌がらせをしていたんです」
「そうだったの?学校側には訴えなかったの?」
「はい、訴えませんでしたし、相手にする気も無かったので放置していました。けれど今回私物を盗まれて…しかも自分の手を汚さずに、立場の弱い相手を脅迫して盗ませたのです。もう私も我慢の限界です。なので、これ以上私に対する嫌がらせ行為を止める為に、遭えて彼女を罰して下さいとお願いしているのです。これは…見せしめの為です。それに…現に実際私の私物を彼女は盗んだのですから」
私はチラリと隣に座るシビルを見た。彼女は先程から口を一文字に結び、青ざめた顔で私の話を黙って聞いている。
「そう…」
女性教諭は溜息をつくと、次にシビルを見た。
「…貴女はそれでもいいの?学校から罰を与えられても?」
「は、はい…構いません…実際に…命じられたとは言え、アンジェラさんの荷物から物を盗んだのは間違いないのですから…」
「そう…けれど罰すると言っても、せいぜい反省文を書かせて1週間の停学処分を受けさせるとかそれ位だけど…?」
「はい、停学処分で十分です。そして反省文は結構です」
ようはパメラにシビルが実際に罰を受けたと言う事を知らしめれば良いのだから。
「本当に…停学処分にしてもいいのね?」
女性教諭はシビルに尋ね…シビルは「はい」と返事をした―。
****
「失礼しました」
頭を下げて、シビルと2人で生徒指導室を出ると教室の前ではペリーヌが待っていた。
「それで?どうなったの?」
ペリーヌが早速尋ねて来た。
「ええ。取りあえずシビルは今から早退する事になったわ。今から1週間の停学処分を受ける事になったから。それでいいのよね?」
シビルを見た。
「は、はい…いいです…」
消え入りそうな声で返事をするシビル。
「後でパメラには私の方から伝えておくわ。シビルは盗んだ罰を受けて停学処分になったって。その話を聞かせた時のパメラの反応が今から楽しみだわ」
「そうね。パメラは完全にアンジェラを舐めてかかっているもの。まさか本当にシビルに罰を与えた事を知れば怖気づくんじゃないかしら?」
ペリーヌは楽しそうに言った。
「あ、あの…それでは私、昼休みが終わる前に…家に帰ります…」
シビルが話しかけて来た。
「ええ。分ったわ。明日にでもパメラの父親が経営している農園に足を運ぶわ。まずはあなた達をパメラの呪縛から解き放してあげないとね」
「は、はい。アンジェラさん…。ありがとうございます…っ!それでは私、もう行きます!」
シビルは目に涙をためて、頭を下げると足早に私たちの前から去って行った。
「ふぅ…行ったわね」
シビルの後姿を見届けるとペリーヌに声を掛けた。
「そろそろ昼休みが終る頃よ。私達も教室へ向かいましょう?」
「ええ、そうね」
そして私とペリーヌは2人で並んで教室に向かった。
さて…面倒だけど、放課後パメラを尋ねてシビルが1週間の停学処分の罰が下った事を報告に行かなくては。
けれど…まさかパメラの方から私を尋ねて来る事になるとは思いもしなかった―。
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