第27話 目障りな女
ペリーヌと並んで、後ろにシビルを従えながら学生食堂を出ると私はペリーヌに言った。
「ねぇ、職員室に行く前に寄りたい所があるの。まずはそこに寄ってからでもいいかしら?」
「ええ、私は構わないわよ」
頷くペリーヌ。その言葉を聞き、後ろを歩くシビルを振り返ると言った。
「今の話、聞いていたでしょう?とりあえず学園の広場に行きましょう」
「え?ええ。分ったわ」
返事をするペリーヌ。
「シビル、貴女もいいわね?」
「ハ、ハイ…」
シビルは今にも泣きそうな様子で返事をした―。
****
私達は学園の敷地内にある広場へとやってきた。この広場には大きな噴水や抽象的な形をしたオブジェがあちこちに置かれている。周囲は木々に囲まれ、学生たちの憩いの場として人気スポットになっている。
そしてここにはオープンカフェにでも置かれそうな大きなパラソルのと丸テーブルに背もたれ付きの椅子が完備されている場所もある。
「とりあえず職員室に行く前にここで話をするわ。座ってくれる?」
パラソルの下のテーブル席に移動すると2人に声を掛けた。
「ええ」
ペリーヌは返事をして座ったが、何故かシビルは中々座ろうとしない。
「どうしたの?座らないの?」
「は、はい。座ります…」
シビルは今にも泣きそうな様子で椅子を引いて座ると、身を縮こませてうつむき加減に私を見た。
「ねぇ、そんなにオドオドしないでくれる?別に貴女の事を取って食おうとしているわけじゃないのだから」
私の言葉にシビルは顔を上げた。
「え…?そ、それじゃ一体何の為に…?」
ペリーヌも怪訝そうな顔で私を見ている。多分私が先生達にシビルに私物を盗まれたと報告するだけで彼女は大変な事になるだろう。何しろ私は貴族で彼女はただの平民なのだから。もし発覚すればただでは済まないことは本人だって分かっているはず。下手をすれば退学にだってなりかねない。それなのに何故彼女たちは自分たちの身が危うくなるような事を命じられてもパメラに逆らえないのだろう?
「ねぇ、ずっと疑問に思っていた事があるのだけど…聞いてもいいかしら?」
「な、何でしょうか?」
「こんな事をしてもし発覚すればただでは済まないこと位、本当は分かっていたんじゃないの?それなのに何故あなた達は自分の身を犠牲にしてもパメラの言うことを聞いているの?」
するとシビルはますます泣きそうに顔を歪めた。
「それは…わ、私達の親がパメラの父親の経営する農園で…働いているからです…」
「そうなの?」
それは少し驚きだ。
「パメラは平民という立場でもお金持ちの娘なんです…。彼女の言うことを聞かなければ私達の親をクビにしてやるって脅されていて…」
「それで逆らえなかったというわけね?」
私の問いかけにコクリと頷くシビル。
「ひどい話ねっ!そんなの脅迫じゃないのっ!」
ペリーヌが憤慨したように言う。
「確かに…それは許し難い話だわ」
「パメラが強気でいられるのは…それだけじゃありません。伯爵家のニコラス様と幼馴染で、更に恋人という立場にあるから…あんな態度を取っていられるんです…。私もグレタもイレーネだって…本当はパメラから距離を取りたいのに…」
シビルは涙混じりに言った。
「そう…なら私に協力してくれるならパメラから手を切れるように便宜を図って上げるわよ?」
「え?どういう事なの?」
ペリーヌが尋ねてきた。
「今回のパメラの嫌がらせは流石に目に余るわ。それに今回パメラはやってはいけないことをしたのよ。私の作ったオリジナル作品を盗ませておいて、お店で買ったなどと言うなんて…あれはまだ何処にも出回っていない物なのに、クリエイターとしての私のプライドを酷く傷つけたのよ。もうこれ以上パメラの為に自分の貴重な時間を奪わるわけにはいかないわ」
これ以上パメラの相手をするだけ時間の無駄だ。
私は決めた。
二度と私に絡んでこないように目障りなパメラを潰そうと―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます