第22話 盗まれたペン立ての行方
困ったことになったわ…。
授業を受けながら盗まれたペン立ての事を考えていた。あのペン立ては店に並べる予定の試作品で、まずはペリーヌにプレゼントをして使い心地を教えて貰おうと思っていたのに…。
私は学園に持ってきている物は殆ど全て記名をしていた。けれどもあのペン立てには名前など書いていない。第一ペリーヌにあげる為の品物だったのだから。
恐らくペン立てを盗んだのはパメラの友人…3人の女子学生の内の誰か1人に違いない。今まで彼女達には散々ないいがかりや嫌がらせを受けていたけれども、物を盗まれたのは初めてだった。
けれど彼女たちが盗んだと言う証拠はどこにもないし、追及する手段も無い。あれはこれからお店に並べる予定なのに…。
仮に店をオープンした後で、ペン立てを店に並べようものならパメラが私の作った品は別の店で買ったもので、真似をして売っていると言いがかりをつけられてしまう可能性もあるかもしれない。
盗まれたペン立ての事が気がかりで、この日の午前授業は全く集中する事が出来なかった―。
****
4時限目終了後―
既に私のクラスよりも早く授業が終わったペリーヌが教室の前の廊下で待ってくれていた。
「お待たせ…ペリーヌ」
教室から出て来た私を見てペリーヌは驚きの表情で私を見た。
「ど、どうしたのっ?!アンジェラッ!顔色が悪いわよ?何かあったの?」
「そう?そんなに悪いかしら?」
「ええ。悪いわよ。ひょっとして具合でも悪いの?」
ペリーヌが心配そうに尋ねて来る。
「いいえ、そういう訳ではないのけど…ちょっとね…」
「…何かあったのね?」
真剣な表情で私をみつめる。
「ええ、とりあえず学食に行きましょう?話は歩きながらしましょう?」
「分ったわ。それじゃ行きましょう」
こうして私とペリーヌは学食へ向かった―。
****
丁度学食へ到着する頃に何があったのか説明を終える事が出来た。
「え?それじゃ…盗んだのはパメラの仲間たちかも知れないのね?」
学食へ入りながらパメラが尋ねて来た。
「ええ、そうなのよ…でも確かな証拠は全くないし、追及する事も出来ないわ。折角ペリーヌにペン立てを渡せると思ったのに…」
窓際の空いている席に座りながらため息をついた。
「何言ってるの?私の事はいいのよ。それよりも問題なのは貴方が作ったペン立てをパメラが他の人達に見せびらかして、お店で買ったとか最悪の場合自分で作った物だと周囲の人達に話しでもしたら?本当はアンジェラが作り上げた作品なのにお店に並べる事が出来なくなってしまうのよ?」
ペリーヌが興奮気味に言う。
「ええ、そうなのよね…。取りあえず、お昼を食べてから話の続きをしない?」
私はペリーヌに声を掛けた。
「そうね。私、今日はランチを持ってきているのよ?アンジェラもランチバックを持ってきているって事は持参してきているのよね?」
ペリーヌが小さなバスケットの籠を私に見せながら言った。
「ええ、私も持ってきているの。それじゃこのまま2人で頂きましょうか?」
するとペリーヌが言った。
「待って、私その前に飲み物を買ってくるわ。アンジェラもいる?ついでに買って来てあげる」
「本当?それじゃオレンジジュースを頼める?」
オレンジジュースの代金200リブをがま口のお財布から取り出すとペリーヌに手渡した。
「あ、それもアンジェラの手作りよね?私も使わせて貰っているわ。口が大きく開くからお金を取り出しやすくて便利だわ」
ペリーヌがポケットから柄違いのがま口財布を取り出すと言った。
「フフ…使ってくれているのね?嬉しいわ」
「当然よ。だってアンジェラの作品はどれも使い勝手が良くて気に入ってるんだから。それじゃ行って来るわね」
ペリーヌは席を立つと飲み物を買いにカウンターへと向かった。
「ふぅ…」
ため息をついて、ランチバックから今日のお弁当を取り出した時―。
「可愛いっ!これどうしたのっ?!」
突然奥の席で歓声が起こった―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます