第23話
エイミーの裁判は、王の国葬の翌日に行われる事となった。
リンゼは国葬に参列しながらも、国王の最期に立ち会えず、牢獄にいるエイミーを想って、胸が痛んだ。
眠る国王の棺にせめてもと、侍女に頼んでエイミーの庭で育てた大量の花を摘んできて貰い、国王の顔を飾った。
国王が好きだったイベリスの花で。
国王はこの花がエイミーの様だといつも言っていた……。
――そして、国葬が終わった時、ジミルの父、最高裁判長から思ってもみない事を言われた。
「明日の検察官はジミルがする事になった」と。
「な、何故ですか……?」
最高裁判長は、口を噤み心苦しい表情をしている。
何か言いたそうで、でも、ユリア王妃の視線を感じているせいか「とにかく」と話を続けて、
「王妃の御指名だ。儂に拒否権は無い。……息子は本気でお前とエイミー様に挑むつもりだ。覚悟していなさい」
と告げて、逃げるように去って行く。
何故――?
ジミルを検察官に起用して、何のメリットがある?
最高裁判長と語っていたのを見ていたユリア王妃は、リンゼを見てニヤリと微笑んだ。
◇
その夜。
明日のための資料を纏めているリンゼの元へ、ジミルが現れた。
しかしいつもと違って、執務室の中へとずかずかと入って来ず、入口に寄りかかり、ズボンのポケットに手を突っ込んだ姿でリンゼを見つめていた。
「――ジミルっ!
話は聞いた「近づくな!」」
ジミルはきつい口調で、歩み寄るリンゼに叫ぶ。
声に驚き、書類が数枚床に落ちた。
ジミルの目は怒りの炎を
「……ジミル?……」
「僕は明日、君を全力で潰す」
「え……」
「いいね、僕はなあなあに裁判をする気は無いから……!」
「ジミルっ! 急にどうしたんだっ! 訳が分からないっ!」
その目は涙で滲み、何か言いたげなジミルだったが、悔しそうに歯を食いしばって、去って行く。
――何故、急に明日、ジミルが……?
ジミルは本気で潰すと宣言した。
それは、エイミーがどうなっても良いと言う事に繋がる。
何故――?
リンゼは慌てて、手紙を書いた。
そして、小間使いの少年に手紙を託す。
リンゼは、少年が去って行くのを見届けてから、夜空を見上げる。
ジミルの急変。
きっと何かユリアが絡んでいる。
けれど、こちらだって戦う準備は整えた。
明日は、絶対に姫様を助けてみせる!
そう夜空に誓い、リンゼは手を強く握りしめた。
そして、運命の日が今、明ける――。
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