第3話 進路相談

「一ノ瀬」


 教卓から声をかけられる。こんなに騒がしい教室の中で声が通るとは流石担当だ。


「森先生?どうかしましたか?」

「進路、どうだ。大学とか。お前の成績ならよっぽどじゃなきゃ浪人は無いと思うが」


 先生が言いたいのは多分お金についてだ。今僕はバイトしているものの安い給料しか出ない。両親の遺産は姉の治療費へ行っている。もちろん遺産は少なくは無かったのだが僕が稼いだわけでは無いので使えない。大学費にもならないだろう。でもそんなことはもう気にする必要はない。


「先生そのことですが大丈夫です」

「ん?大学費は大丈夫なのか?」

「ああ、僕大学行かないんで」

「奇病のことを勉強しに行くんではなかったのか?」

「はい。僕はやっぱりレッダーになります」


 そう宣言するとここは教室内なわけで。


「何言ってんだアイツ~www」

「流石陰キャ~w高校生で厨二病は無いわ~」


 などと聞こえる。森先生も何言ってんだという顔だ。


「おい一ノ瀬分かっているのかそれがどんなに大変なことか。特に突出していないお前は無理に決まって「先生こそ何言ってるんですか?」


 言葉を遮ると森先生は僕の顔を見て怪訝そうな顔をした。コイツも口答えはできるのかという顔で。先生達は多分入隊するのに訓練が必要だということを知っている。それでも先生に止められる筋合いはない。15歳以上であれば学校に通いながらでもレッダーを目指せる、というのは15歳で訓練し長くても三年で入隊できる。短い人は15歳で推薦入隊だそうだ。しかし訓練を乗り越えて入隊できるのは一握りしかいない。レッダーを目指す人は多いがレッダーは実際少ない。それだけ厳しく入隊合否を取り締まっているのだろう。実力主義なのだ。レッダーが人気なのは僕のような理由の人が多いからではない。給料がバカ高いのだ。正式な給料は知らないが今世界のどの会社より高いと言えるだろう。僕が推薦された理由は勘以外には知らない。ただのパシリかもしれない。


「最後まで話聞いてくれます?」


 何故か今僕はキレていた。今まで何度も否定され続けて慣れっこなはずなのに。


「僕は卒業と同時に入隊します。すでに僕は進路が決まってますので大丈夫です。では」


 森先生は非常に驚いたのか焦点が合わず、クラスメイトは僕に道を開けて気まずそうにしていた。

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