第14話 取り返しのつかない失言
「……ええ、まあ」
マイルズの言葉に、アイフォードは淡々と答える。
しかし、そんなアイフォードの反応に一切気づくこともなく、マイルズはさらに続ける。
「気持ちを隠さなくても、ここに本人はいないのです! マーシェルお嬢様の傲慢な態度に関して文句を言ってよろしいのですよ!」
さらには、マイルズは一方的に語り出す。
「多少経営ができるだけで、あのように傲慢な態度をとれるところなど。多少それらができたところで、女は男以下の存在なのは変わらないというのに!」
そのマイルズの言葉は一方的かつ、私への敵意を隠さないものだった。
しかし、それを聞く私の口元には、かすかな笑みが浮かんでいた。
一方的に話すマイルズは気づいていない。
だが、私からははっきりと見えていたのだ。
──マイルズの言葉に、不機嫌そうに顔を歪めるアイフォードの姿が。
私は内心、マイルズに感謝する。
私のために怒るアイフォードの姿を見せてくれたことを。
もちろん、アイフォードは優しい人間だから起こってくれているだけだろう。
それでも、私の為に怒ってくれているアイフォードを見せてくれたのは、今のマイルズの悪口さえ気にならなくなるほど私にとって嬉しくて。
だが、そろそろ好き勝手聞くのも飽きてきた頃だった。
「……そろそろお礼してあげないとね」
そう誰にも聞こえないほど小さく告げた私が顔を上げると、ちょう度合いフォードとマイルズが客室に入っていく姿が見える。
もう、これでマイルズが私から逃げることはできないだろう。
そうにっこりと笑った私は部屋の中へと自分も入っていく。
その中では、すでにマイルズが椅子に座ったアイフォードに何かを頼み込もうとしている姿があった。
「ところでどうでしょう? マーシェルお嬢様の他にも当家には綺麗なお嬢様が……」
「あら、必要ないわ」
「……は?」
始めてはっきりと声を告げた私に、呆然とマイルズが顔を上げる。
そこには、隠しきれない衝撃が浮かんでいて私は笑ってしまいそうになる。
声を聞いて、ようやく私の正体に気づいたかと。
内心笑い出しそうなのを必死に堪え、私はマイルズを押しのけ、アイフォードの元へと歩いていく。
そして椅子に座っているその肩に手を置き、にっこりと笑った。
「アイフォードには私だけで十分ですもの」
「……ま、まさなマーシェル様? そ、そんな」
そして私は、呆然とするマイルズににっこりと笑って告げた。
「それにしても散々な言いぐさだったわね?」
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