第9話 同席交渉
「……え?」
そのコルクスの言葉に、私は思わず声を上げていた。
「やっぱりきたか……」
しかし、一方でアイフォードは一切の動揺もなかった。
反射的にアイフォードの顔を見上げてしまった私は、その顔に浮かぶ真剣そのものな表情を見る。
……そして、自分だけがその可能性に気づいていなかったことに私が気づいたのはその時だった。
コルクスはまるで自分が悪いとでも行いたげな苦悩の滲む表情で口を開く。
「申し訳ありません。これまで、様々な手段で手を回して伯爵家に情報が行くのを何とかして遅らせようとしたのですが、力及ばず……」
「……謎の経路によって情報を得たということか?」
「あくまで私がしらない内に情報を手にしていただけですが」
「コルクスが知らない経路からと言うだけで十分脅威だろう」
コルクスの会話を聞いて、アイフォードが考え込む。
その横でその会話を耳にしていた私はゆっくりと口を開いた。
「つまり、伯爵家がここにやってくる可能性があるということね」
「ええ。……力及ばず、本当に申し訳ありません」
「いえ、ここまで持たせてくれただけで十分なのだから」
そう言って、私は少し思案して告げる。
「とにかく準備するのが必要ね。……あの人間たちなら、間違いなく乗り込んでくるのは確実でしょうから」
「そのことなんだが、一ついいか?」
思案する私に対し、アイフォードが口を開いたのはその時だった。
何事かと目を向ける私とコルクスに対し、真剣そのものな表情でアイフォードは口を開く。
「マーシェルは伯爵家に関わらないようにしてくれ」
思ってもしない言葉に、私が顔を向けるとアイフォードの顔に浮かんでいたのは真剣そのものな表情だった。
「前回も前々回も、お前には前科があるはずだ。だから、今回は席をはずしていてくれ」
そう告げるアイフォードの声は、ここ付近ではあまり聞いたことのない位に厳しい声だった。
しかし、今の私は知っていた。
その厳しさは私への心配の裏返しなのだと。
だから、私はにっこりと笑って告げる。
「いえ、大丈夫よ。私はもうなにも実家に関して感じてないから」
「……マーシェル?」
その私の態度が想定外だったのか、呆然とアイフォードは声を漏らす。
しかし、すぐに頭を振って告げる。
「いや、そんな問題じゃ……」
「アイフォード様、こと伯爵家においてはマーシェル様がいた方が話が進むかもしれません」
「コルクス!?」
「侯爵家でも伯爵家を担当していたのはマーシェル様だったのですから」
そういっても、アイフォードの顔から不安が消えることはなかった。
そんな態度に、コルクスはさらに続ける。
「そもそも、マーシェル様から目を離しておく方が何倍も厄介でしょう?」
「っ!」
確かに、とでも言いたげにアイフォードが目を見開いたのはその瞬間のことだった。
内心大いに不満を感じながらも、私はアイフォードににっこりと笑いかける。
そんな私に大いにアイフォードは悩み。
「……分かった同席を許そう」
そうアイフォードが頷いたのは、数分の時間が経った後だった。
◇◇◇
最近少し休みがちですいません……!
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