第四十七話 『まずは様子見......という訳にはいかない』


 僕達は慎重に扉を少し開け、中の様子を覗く。


(誰が固有スキル持ちだ?)


 部屋には魔術師の様な恰好をした十人の男たちが居た。


《鑑定眼を発動します》


 僕は一人ずつに鑑定眼を掛けていく。

 そして、まず一人目を見つけた。


「みんな、奥で静かに座ってるあの男が「ゲート召喚」という固有スキルを持ってるらしい。効果は、自身が見える範囲の何処にでもワープゲートを召喚するというもので、」


 僕は三人の顔を確認しようと振り向いた。

 しかし、そこには三人は居なかった。

 というか、そもそも背後の景色が王宮の壁ではなくなっていた。

 草原だ。

 それも、目に届く範囲は全て草原が続いている。


「全くさぁ~~、浅はかなんだよなぁ~~。」


 そう言って、ローブを着た一人の冥皇の弟子がこっちに歩いてきた。

 彼はやれやれとでも言いたい風に首を振りながら歩いてきた。


「みんなは何処へ行った!」

「そう焦るなって。ここは良いところだろう、あたり一面が大草原。あんな都会に居ちゃあ、絶対に見れないもんなぁ~。流石俺の故郷だぜ。」


 こいつよく見ると、尻からシッポが生えてやがる。

 それに、耳はなんと猫耳だ。


「ここは何処なんだ?」


 僕は無理やり自分を落ち着かせて、目の前の男、名前は確かサンドリアだったか、サンドリアに質問をする。


「はあ、何でそんなこと知る必要があるんだよ。お前はただ、俺に負けた後にどうやって命乞いをするかを考えときゃいいんだよ!」


 そう言って、サンドリアは僕目掛けてクナイを投げてきた。


(クナイ!?)


 ここに来ていきなりの忍者要素に、僕は困惑した。

 が、クナイに関する考察は後でするとしようか。


「よっ、」


 僕は全身に魔力を巡らせて身体強化状態となり、クナイを躱す。


「この程度で僕に、」

「そうやって油断するところが、浅はかなんだよなぁ~~。」


 僕はクナイを避けた。

 だが僕が避けたクナイの後ろにはもう一本、本命のクナイが飛んできていた。


「クッ、」


 身体強化を一瞬で最大火力にして避けるが、流石に躱しきれずに右腕にクナイがかすった。

 だが、そこまで致命的では無い。


「おお、今のを避けるか。お前のスキルに今のを避けられる様なスキルは無かったから、お前魔力をそのまま操れるな。」

「まあね。」


 この世界に来て、僕はとある固有スキルを手に入れた。



「ジェネラリスト」

知識や技術等の幅広い分野においての成長が早くなる。



 本音を言えば、「次元転移」や「認識阻害」の様な戦闘向きなやつが良かった。

 だが、使い方さえ間違えなければこの固有スキルは非常に汎用性が高かった。

 ショウワールさんに相談したところ、それなら魔力を操る技術を習得するべきとのことだった。

 今俺が身体強化を出来たり、相手がスキルを使った瞬間にスキルに生まれる魔力を感じ取ることが出来ているのはそのショウワールさんの助言のお陰だ。

 後は、鑑定眼で相手の記憶を読む速さが増したというちょっとしたメリットもあった。


「それなら、ここが何処かまでは分からなくても、どうやって自分がここに飛ばされてきたかくらいは分かるんじゃねぇのか?」


 その通り、何故今こんな状況になっているのかは大体理解している。

 あの時、僕の足元にゲートを召喚してこの草原の上にワープさせたのだろう。

 だが、全ては理解出来ない。


「そもそも、どうして僕らのことを認識出来ていたんだ?」

「はっ、そんなこと自分で考えやがれや。俺は既に、お前を殺すスタンバイは出来てんだぜ。」


 その瞬間、僕の目の前にブラックホールの様な見た目をしたゲートが現れた。

 そしてそのゲートから、サンドリアの手が出てきて僕の首を掴んだ。

 そして手足は、ゲート越しで木に縄で結ばれてしまい動かせない。


「クッ、」

「言ったろ、お前は俺への命乞いだけを考えてればいいってよ。」


 サンドリアはどんどん僕の首をきつく絞めていく。


「おっと無駄だぜ。俺の「ゲート召喚」は俺の視界の全てが射程圏内だ。」


 僕がゲートから出ているサンドリアの腕をどかそうとしても、その瞬間

その腕の周りにゲートが現れて僕の手を飲み込んでいく。


「はははっ、首を絞めてるから命乞いのしようもねえなぁ~~。」


 そう言ってサンドリアは上機嫌に笑い出した。

 あの顔は、勝ちを確信した顔だ。


「まあ、せめてもの慈悲だ。言い残した言葉があるんなら聞いてやるぜ。」


 その瞬間、僕の首の拘束が若干弱まった。

 これで声を出せるようになった。


「さあ、さっさと惨めったらしくその顔面を歪ませて俺に請えよ、助けて下さいってよ、さあ!」

「まさか。」


 僕は彼の言葉を鼻で笑う。


「お前、この状況理解してんのかよ。お前は俺に殺されるんだぞ。なのに何故そんなすかしたツラを出来んだよっ!」


 サンドリアはゲート越しに僕の顔を殴る。


「分かった、なら分からせてやるよ、お前の希望を打ち砕く為にもな。お前はその状態から、俺に魔力を飛ばして攻撃するつもりなんだろう?」


 サンドリアは饒舌に話し続ける。 

 

「だがな、俺は獣人だ。この距離からの攻撃なんて軽く躱せる。そしてそして、そのゲートは俺が許可をしない限り魔力を通さない。分かったかよ、お前の絶望的な現状をよ!」


 そう言って、サンドリアはまた僕を殴る。


「お前はただ、俺に泣いて許しを請う、これ以外の選択肢なんてねえんだよ!」


 そして、サンドリアは殴り続ける。


「お前の考えなんてお見通しなんだよ! 本当にお前は浅はかだなぁ~。浅はか浅はか浅はか浅はか浅はか浅はか!」


 地球に居た頃の僕なら、このラッシュで死んでいただろう。


「ペッ、」


 僕は口内に溜まっていた血を地面に吐く。


「で、なんか言うことはねえのかよ?」

「あるよ、一つだけね。」


 僕は笑いながら言ってやる。


「一つだけ、お前に教えといてやるよ。」

「あ゛?」

「いつだって、そうやって勝ち誇った奴から負けていくのがセオリーなんだよ!」


 その言葉を放った直後、僕は口から舌だけを出して、溜めていた魔力を一気に開放した。



~あとがき~


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