長孫嵩3 成敗の優先順

拓跋嗣たくばつしが病に伏せると、長孫嵩ちょうそんこうに後継者問題について問う。長孫嵩は答える。


「長じたお子を立てるのがよろしいでしょう。さすればその徳にて人たちは服しまする。長ぜる皇子が賢からば次代の長とするのが、天のお命じになるところ。ならば拓跋燾たくばつとう様をお立てになるべきです」


こうして禁裏にて拓跋燾による継承が確定となり、拓跋燾に朝参のうえ国事の代行をなすべく命じられた。また長孫嵩にその左側に立っての補佐が命じられた。

拓跋燾が即位すると、北平王ほくへいおうに進爵され、司州ししゅうの登用まわりの総監となった。


拓跋燾が今後の征服計画を諸侯らに問う。ここで長孫嵩と、おそらくその親族(詳細不明)である長孫翰ちょうそんかん、そして奚斤けいきんらが答える。


赫連かくれんどもは領土の確保に汲々とし、我らの患いにはなりませぬ。対して柔然じゅうぜんはここしばらく国境を害し続けております。ならばまずは柔然可汗じゅうぜんかがん大檀だいだんを討伐すべきでしょう。奴らの飼う家畜らを手に入れれば、お国も富むことでしょう。それが叶わないのであれば、奴らの陰山いんざんまわりでの闊歩を許し、多くの家畜を奴らに殺され、その資産を奴らの軍資とされましょう。さすれば我らが、小国に破られてしまいかねませぬ」


この発言に、崔浩さいこうが反論する。

「大檀は鳥逝ちょうせいに移り、迂闊に追撃をかければのらりくらりと逃げ回り、捕捉も叶いますまい。対して赫連勃勃かくれんぼつぼつは、その領土も千里に及ばず、加えて残虐極まりない刑罰を行っております。人や神に見捨てられてしかるべき振る舞いであり、ならば奴をこそ先に討つべきであります」


劉潔りゅうけつ安原あんげんは北燕の馮跋ふうばつこそ先に討伐すべきであると言う。


拓跋燾は結論を出さぬまま、西方に狩りに出た。そのタイミングで赫連勃勃死亡、これによる関中情勢の混沌化の報が飛び込んでくる。そこで拓跋燾は改めて夏の征伐に出るべきかどうかを問う。


長孫嵩らは言う。

「夏軍が守りを固めて参ったら徒労が募りましょう。柔然軍がそれを聞いたらすぐさま手薄な平城へいじょうを襲って参ります。危険です」


拓跋燾はこの軍役の行方を道士どうし寇謙之こうけんしに尋ねたところ、寇謙之は行くべきであると勧める。また杜超之とちょうしも夏の征伐に賛成。崔浩までもが夏の征伐に利ありとした。長孫嵩らはかたく諫めたが拓跋燾は聞き入れず、むしろ怒り、長孫嵩の職責に汚職があったとして処罰を加えた。まもなく太尉たいいとなった。それからややあって、柱國ちゅうこく大將軍だいしょうぐんとなった。




太宗寢疾,問後事於嵩,嵩曰:「立長則順,以德則人服。今長皇子賢而世嫡,天所命也,請立。」乃定策禁中。於是詔世祖臨朝監國,嵩為左輔。世祖即位,進爵北平王,司州中正。詔問公卿,赫連、蠕蠕征討何先。嵩與平陽王長孫翰、司空奚斤等曰:「赫連居土,未能為患,蠕蠕世為邊害,宜先討大檀。及則收其畜產,足以富國;不及則校獵陰山,多殺禽獸,皮肉筋角,以充軍實,亦愈於破一小國。」太常崔浩曰:「大檀遷徙鳥逝,疾追則不足經久,大眾則不能及之。赫連屈丐,土宇不過千里,其刑政殘虐,人神所棄,宜先討之。」尚書劉潔、武京侯安原請先平馮跋。帝默然,遂西巡狩。後聞屈丐死,關中大亂,議欲征之。嵩等曰:「彼若城守,以逸代勞,大檀聞之,乘虛而寇,危道也。」帝乃問幽微於天師寇謙之,謙之勸行。杜超之贊成之,崔浩又言西伐利。嵩等固諫不可。帝大怒,責嵩在官貪污,使武士頓辱。尋遷太尉。久之,加柱國大將軍。


(魏書25-3)




崔浩さんが出てくるとみんな辱められんの草

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