第4話

 なかなか好きな人ができないオレ…

 

 

 小学校以来ずっと好きな人出来てないんだ

 よなぁー…。

 でも、津川さんに好きな人がいるってわか

 ってなぜかへこむ。

 もしかしてオレは津川さんを……。

 津川さんを好きなんじゃねーの⁉︎

 

 最近の津川さんは、小学生の頃好きだった

 セイラちゃんに雰囲気似てるんだよなー。

 しかも津川さんも名前がセイラなんだよな。

 名前のせいで似てるって錯覚起こしてんの

 かな。

 

 

 放課後

 あー委員会結構長引いたなぁって、雨…

 さっきまで降ってなかったよなー。

 でも大丈夫。

 雨に濡れたくないオレは傘を常に持ち歩い

 ているのだ。

 ジャジャーン!

 

 あれ?

 津川さん?

 昇降口の入り口でたたずむ姿がなんとも絵

 になりますな。

 

「津川さん、もしかして傘ない?」

「あ、琢也君。」

「よかったら入る?嫌かもだけど…」

「ううん。助かる!ありがとう。」

 

 

 津川さんと相合い傘。

 

 

「ねぇ、琢也君。」

「何?」

「相合い傘だね。」

「あ、うん。そうだね。」

「私さ、好きな人いるって言ったでしょ?」

「あー…」

「その人、もう私なんか多分覚えてなの」

「そうなの?」

「うん。小学生の頃の同級生でね、一度席が

 隣になってそれから仲良くなったんだけど、

 席替えしてから話さなくなってそのまま、

 数年後私転校しちゃったんだ。」

「えっ…」

「その人の名前琢也准君って言うの。琢也君

 と同姓同名。すごくない⁉︎」

「同姓同名か。すごいね。」

「うん!初めて名前聞いた時びっくりしてね、

 まさか⁉︎なんて思ったんだけど、その人す

 ごくぽっちゃりさんでね、優しくて素敵な

 人だったの。あー、もう一度会いたいなぁ。

 そしたら今度こそ好きって伝えたいんだ」

「そっか。会えるといいね。オレも小学生の

 頃好きだった子いたんだ。でも、津川さん

 と同じように六年生の時転校しちゃったん

 だ。瀬戸さんって言うんだけどね、それが

 下の名前セイラちゃんって言うんだ。今で

 も忘れられなくてさ…」

「えっ…」

 津川さんの顔が真っ赤に染まった。

「どうしたの?」

「私…あの私…旧姓瀬戸。瀬戸セイラ」

「えっ、じゃああのセイラちゃん⁉︎」

「うん。ヤダ…どうしよう。私琢也君に告白

 しちゃってた。」

「えっ、取り消したい?」

「ううん。そうじゃなくてやっと会えた…う

 れしい。」

「オレもセイラちゃんに会えた。うれしい、

 すっごく!」

 それから二人で小学校の頃の話をしたり、

 どうやってこんなに痩せたかなんて話をし

 た。

 

 

 それから、オレたちは交際を始めた。

 ずーっと両思いだったなんてびっくりだ。

 ってか、あんなに太っていたのに好きでい

 てくれたなんて…

 鼻息とか荒かったのに…

 でも、セイラちゃんはそんな事気にしなか

 ったなぁって笑って答えてくれた。

 一度だけ友達に琢也君の事どうなのか聞か

 れてないかなぁって答えたそうだ。

 でも、ないかなぁって意味は誰も好きにな

 らないようにしていたから、ないかなって

 答えたそうだ。

 転校する予定があったから、好きな人つく

 ると、離れるの辛いからって。

 でも、好きにならないって思えば思うほど

 忘れられなかったって話してくれた。

 

 

 

 

 

 付き合って一年くらい過ぎた。

 セイラちゃんは、オレを准君と呼んでいる。

 二人で仲良く下校中。

 これから二人でカラオケに行く予定だ。

 

「あのー…琢也さんですよね?」

 ぽっちゃりした男の子が話しかけてきた。

「うん。そうだけど君は?」

「僕…一年なんですけど迷子で…」

「なら、案内するよ。どこ行くの?」

「あのー、僕人生の迷子なんです…」

「えっ、人生の迷子⁇」

「僕、一年の田川祐一郎といいます。ねーち

 ゃんに琢也さんにダイエットの仕方教われ

 ば、彼女ができるって言われたんですけど

 も…」


 あー…

 田川さんの弟か。

 どうすっかなー。

 これからデートだし。

「ねぇ、准君。カラオケ祐一郎君も一緒に誘

 ってあげるのどうかな?」

「セイラちゃんが良ければオレは全然いいけ

 ど。」

「よし!じゃあ祐一郎君。一緒にカラオケに

 行っていっぱい歌ってカロリー消費しよう

 じゃない。」

「えっ、デートにお邪魔していいんっすか」

「いいよ。じゃ行くか。」

「はーい。」

「うぃーっす!」

 思いがけず一人増えたがまあ楽しそうだし

 いっか。

 

 軽い気持ちでオレたちは、祐一郎を誘った

 のだか、これから祐一郎君の未来がガラッ

 と変わっていくのであった。

「まずは、恥ずかしいので先輩方から歌って

 くれませんか?」

「うん。」

 先にオレから歌った。

 次にセイラちゃん。

 よく二人でカラオケに来ているからいつも

 通りだ。

 

 次に祐一郎君。

 マイクを握り歌い出した。

 …オレとセイラちゃんは、顔を見合わせた。

 オイオイ…どう言う事だよ。

 

 

 続く。

 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る