#54 靴を捨てる

いつだったか、親の癇癪に触れて

自分の靴と共に外へ放り出されたことがある。


当時10にも満たなかった自分は

大人の難解なこけおどしなど判るはずがなく、

ただ自分は捨てられたのだという事実と共に

一緒に捨てられた靴を履かずに辺りを彷徨い歩いた。


夜更け、子供を屋外に放置するという行為が

正しいのかとか、教育上どうだとかは心底どうでも良い。

そういう幼少期が自分を歪めたとか、そういうのも今はどうだって良い。


ただ、あのとき靴を捨てた自分は

きっとどこまでも行けたのだ。

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