8話 召喚魔法とかの話
「どこいったんだ〜い、レイナちゃ〜ん」
ナナリは杖をクルクルと回し、わざとらしく辺りを見回すような仕草をしている。
「レイナさん、できそうですか? 」
僕は自分のアドバイスを実行可能かとレイナさんに問いかける。
っていうかこんな近距離でレイナさんの顔を見たことなかったけれど、めちゃくちゃ美人だ。
「私、出来るかは分からないんですけど…… やってみます」
レイナさんは両手で小さくガッツポーズをして微笑む。
エネルギーが内面に向かい、内気さを全面に出してしまうタイプの人のこういうやる気のある様子っていうのは、少しドキッとしてしまう。
「が、がんばってください! 」
僕は赤面を悟られないように目を逸らして激を飛ばした。
ナナリは相変わらずヘラヘラとしながらレイナさんを探していた。
「レイナちゃ〜ん、どこ― なんだ、もう覚悟は決まったのか? 」
レイナさんはさっきまでとは打って変わって、漂う雰囲気が重みを帯びていた。
「なんだよ? 随分と格好のいい顔つきになったじゃねぇか」
レイナさんは何も言わずに聖勢をとる。
その様子は5組の連中からするとやっぱり滑稽にしか見えないようだ。
「おいおい、まだやんのか? 」
「お前の渾身はもう効かないってわかってんだろ? 」
「ゴミが、諦めが悪いぞ! お前らは必要とされてない存在なんだぞ! 身の程をわきまえろ!! 」
罵倒や嘲笑がこれでもかというほどレイナさんに降りかかる。
7組のみんなは黙って言い返そうとしない。、
まるでそれが本当のことかのように受け入れてしまっている。
「これは僕が何か言った方がいいのか―」
僕は立ち上がり木陰からレイナさんの方を見る。
そこでハッとする。
「なんだ、全然大丈夫じゃんか」
僕は人の表情を読み取るのも得意だ。
そんな僕から見てもみんなの中には悔しさがあるのを感じたのだ。
このままではいけないとみんなどこかで思っている。
魔法とは意志。
魔法という存在こそ当人の意識に左右されるものはない。
だから強くなるためには、偉い先生に学ぶより、質の高い教材を買うよりも、強くなりたいという意志が1番大切なのだ。
それを持っているのなら絶対に成長できる。
それを示すまず手始めとして。
「レイナさん、やっちゃってください」
僕はレイナさんに聞こえるか聞こえないかくらいの声でそう言った。
「レイナ、お前はそういや昔からそうだったな? 自分からは何もせず、周りの言われるがまま。どうせこの学校に入学したのも親の希望を押し付けられたんだろ? だからこんなクズみてぇな成績しか残してねぇ 」
口ぶりからどうやらナナリはレイナさんを昔から知っているようだった。
「アタイはお前みてぇな周りの言うこと鵜呑みにして流されて生きてるやつが大嫌いだ。何故か分かるか? そういう奴は自分が挫折した時、必ず周りのせいにするからだ! 」
ギュウと杖を握りしめ、ナナリはそう叫ぶ。
レイナさんは返事をしなかった。
「そうだよな、お前はそういうやつだよな。 ムカつくぜお前はそうやって俯いて、現実から目を逸らし続けていりゃーいーさ! 」
ナナリは聖勢をとり魔力を込める。
それは今までとは比にならない程の高い魔力だ。
「バカ! ナナリ何やってんだ! 死んじまうぞ!」
流石にポイ先生もこれには焦ったようでナナリの肩をつかみ止めようとする。
しかし
「っルセ! 触んな! アタイはアイツに越えられない壁ってもんを教えてやんなきゃなんねーだ! 」
ナナリはポイ先生を振り払い呪文を唱える。
「
ナナリの周りを炎で形作られたライオンのような獣がグルグルと回る。
「召喚魔法だ! 」
「うそ、召喚魔法つかっちゃうの」
周りの生徒達はザワつく。
召喚魔法とは魔法をひたすらに磨いてきた者だけが使うことの出来る、上級魔法の1種だ。
それをただの学生が使えるなんて、ナナリはかなり優秀なのだろう。
「さぁ、コイツで心をおってや……― 何だ、お前その魔力は? 」
ナナリは目を丸くする。
それもそうだ、レイナさんの魔力は青いオーラとして出力されていたのだ。
「魔力が、オーラになって見えるだと…… お前、“色つき”だったのか? 」
<あとがき>
できるだけ高頻度にしたいですが、3日に1回がベースです!
水曜日、金曜日、月曜日です!(土日もするかも)
投稿時間は20時です!
評価やコメントとして頂けたらとっても嬉しいです!
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