郷田班の元へ、ルーカスがやってきた。ノアが見つけたものを説明するためだ。

「郷田さん、お時間よろしいでしょうか。彼が見つけたものをお伝えしたくて」

 ルーカスはそう伝える。郷田もうなずき、彼の話を聞く体勢を整えた。

「ありがとうございます。実は、うちのノアが事件発生場所に注目し、独自の視点から推理していたのですが、事件発生場所がすべて県庁所在地になっているのです。改めて日本の関東の地図で確認したのですが、それは間違いないようでして……」

 郷田は「うちもあなたたちの会話を聞かせていただいていました。県庁所在地で事件発生、これは間違いないようです」と返事をする。そして会議室内に響く声で、捜査員たちを自分のほうへと向けた。

「今、FBIの捜査官の方とお話をしていました。早速だが、彼らのおかげで捜査が一歩進展したようです。皆さん、資料にご注目願いたい。事件はすべて県庁所在地で起きている。このことから、犯人が示しているものは何か、何らかの関りがあるのかを重点的に捜査班員を分けたいと思うのですが、皆さんはどうでしょうか」

 郷田は各県警捜査員に尋ねた。

 一番先に声をあげたのは、神奈川県警の警部補である長谷川だった。

「異議ありません。捜査は正直に言って手詰まり状態。このままでは無駄に時間が過ぎてしまいます。やれることはやってみましょう」

 彼がそう言ったのを皮切りに、一同は郷田の意見に賛成した。

「アンダーソンさん、あなた方のおかげで、一歩進みました。ありがとうございます。それでなんですが……もしご迷惑でなければ、うちの班とあなた方FBI、一緒に捜査するというのはどうでしょうか」

「ありがとうございます。そうさせていただけるとありがたいです。アメリカで起きた事件の被害者となった男、彼の仕事仲間が東京にいるようでして、この地のことはあまり詳しくはないものですから、ご一緒させていただけると幸いです。その前に、彼らにも聞いてみますので、少々お待ちください」

 彼はそう言うと、頭を下げ、ノア達の元へ向かった。

 ルーカスは身振り手振りで、ノアにも伝える。彼の視線は時々、郷田班へと向いていた。その視線がほんの少し不安そうに見て取れる。彼らは頷く。そしてルーカスだけが戻ってきた。

「彼らもそれで賛成のようです。ただ、一つだけお願いが……。スペースは今、我々が使わせていただいているあの場所でお願いしたいのです」

 彼の相談に郷田は一瞬、顔を曇らせた。しかし斎藤の「場所はどこでも。後ろの方が動きやすいですし」という言葉で、話は進んだ。


 この合同捜査が幸いし、事件捜査の進展は一気に加速することになる―――。

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