第46話災害の元凶



新章29.災害の元凶


「そういえば真宗くん、私のこの姿に全然ツッコミ入れないよね。」


草薙小隊結成後、しばらく歓談しているとセリカがいきなりそんなことを言い出した。完全に忘れてた…ってよりも…


「お前がそんな暇もなくいきなり…き、キスしてきたせいで聞かなかったんだろがい。俺も確かに忘れてたけどさ。」


これ自分で言っててめっちゃ恥ずいな。


「は?お前らマジのマジでそんな仲だったのか?」


リズがめっちゃ驚いてるけど、そういえばこいつは知らないんだったな。あの時は頑張ってドラゴン野郎の足止めしてくれてたし。


「そうなの!!私と真宗くんは将来を誓い合った仲なんだよ!!」


「ストォォップ!多分長くなりそうなんで、その話はまた後でな?あと、クネクネするな。」


まったく。この調子だと本題がなんだったかわかんなくなりそうだな。

というかこいつ、自分から話を振っておいて答える気が全くないように見えるんだけど?


「そうだね。リズ君には後で私と真宗君の出会いをじっくりと聞かせてあげるとして、私の姿のことだったよね?」


一ヶ所引っかかるところがあったのか、リズがすごい嫌そうな顔してるけど気にしたら負けだ。飛び火を喰らわないように気づいていないふりをしておこう。


「えっとね。私生まれつき魔力がないの。」


「はっ!?でも、『暴食』の権能って…」


「そう。魔力の無限吸収。だから私とは相性最悪なの。でもね、真宗君と契約したおかげで今は『暴食』でよかったって思ってるんだよ?」


そう言って誤魔化すように笑うセリカに、全員がなんと声をかけていいのかわからなかった。


「さっ。もう遅いしそろそろ部屋に戻ろう!」


微妙な空気を察してか、セリカは部屋から出て行く。


「……んじゃ、俺らもそろそろ戻るか。」


「真宗くんちょい待ち!!」


出ていくタイミングとしてはちょうどよかったんだが、クロスが片手を上げて呼び止めてくる。


「さっきもチラッと話したけど、これから先魔物の活性化が予想されるから気をつけてね?」


……さっき?ああ、あの混沌龍の出現による魔物の活性化云々とか言うやつか。


「そもそも混沌龍ってなんなんだ?」


「真宗くんそれ本気で言ってる?」


俺としては真面目な質問だったんだが、クロスはおろかリズまでも「こいつマジか」的な顔をしてる。


「流石にそれの説明をされてないわけ……いや、鬼丸くんならありえるか。」


信じられないような顔をしていたが、何やら合点があったらしい。ついでに俺も理解した。どうやらじいちゃんがまた、大事な説明を面倒くさがってしてくれなかったらしい。


やばいな。ここ数時間で俺の中でのじいちゃんの株が下がりきってる。


「あのね?多分『三界龍』の説明もされてないと思うから一応しておくけど、真宗くんたちが初任務で出くわしたドラゴンは混沌龍トヘトヘって言って、『三界』のうち、この下界の秩序を守ってる存在なんだよ。


幼体の頃だと無差別に周りを攻撃するから、少し前に封印されてたはずなんだけどね。僕が確認しに行ったら封印が何者かに解かれてた。」


へぇ。そんなやばいやつの封印を解いたやつがいたのかよ。

……………ん?待て、そういえば初任務の時にイナが何かのボタンを押してたような……。


「なあギルマス。その封印ってもしかして地面にあったボタンみたいなやつか?」


「そだよ。真宗くんよく知ってるね。」


俺の嫌な予感は当たっていたらしい。となると、今回の事件の元凶は……


「あいつらか!!」


そう。さっきからずっとソファの上で寝こけているアホ2人である。


「あー。あるほどそういうことね。」


「は?どういうことだ?」


クロスは俺の視線から察したらしいが、リズは頭の上にはてなマークがあるな。


「はーい。話についていけてないリズのために分かりやすく超簡潔に説明します。ルナを追いかけて入った洞穴でイナが押しちゃいけないスイッチを踏んづけました。」


「あぁ。なるほどな。そう言うことか。」


「あれ?意外と怒らないのな。」


「あの光景を見て怒れるわけねぇだろ。」


そう言ってリズは優しい目でイナたちを見る。

案外、こいつは言動が粗暴すぎるせいで勘違いされやすいだけでいいやつなのかもしれないな。

それともシルヴァ同様にただのロリコンなんだろうか?


かくしてその場はお開きとなり、大事件を引き起こしてくれた張本人たちをリズとクロスが部屋へと運びこんだのを見届けて俺も部屋へと戻る。


なんか病み上がりなのに色々ありすぎて疲れたな。

まぁ、あとは寝るだけだしもう何も起こらないだろ!!


結論から言うと、そんな甘い考えが通用する訳もない。

何故なら……


「おかえりなさい真宗くん。ご飯にする?お風呂にする?それとも…た・わ・し?」


自分の部屋のドアを開けた瞬間、セリカが満面の笑みでそう言って立っていたからである。


「最後のやつたわしになってるぞ。」


「あっ!ごほん……」


「言い直さなくていいわ!!」


その後、駄々をこねるセリカをなんとか自分の部屋に戻るように説得して…というのは無理だったのでさっき執務室で言っていた話をリズにしたらどうかと提案したところ、そそくさとリズの元へと走っていった。


ちょーーっとだけ申し訳ない気持ちもあるが背に腹はかえられない。リズという尊い犠牲の元に俺はようやく落ち着いて眠りにつくことができたのだった。


……………………………………………………

トゥービーコンテニュー

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