第2話





「レイナード様、やっぱり素敵よね」


 お昼休憩中に、タラがうっとりと呟いた。

 銀髪の美形で、剣の腕はこの騎士団で一番だと言われている。そんな王子様を、乙女達が放って置くわけがない。見学の女の子達だけじゃなく、他の部隊の女性騎士達もレイナード王子に群がっている。


 うん、すごいなぁ。


 でも、私が一番カッコいいと思うのはクロウなの。本当はクロウと一緒にお昼を食べたりしたいけど、クロウは仕事と私生活は分けたいだろうから我慢している。

 クロウが騎士団に入団する前は我が家に居候していたから、毎日一緒にご飯が食べられたのになあ。

 クロウは入団と同時に騎士の独身寮に移ってしまったため、二年前からはなかなかゆっくり会うことが出来なくなっている。


「あ。あれ見て」


 イリーナが耳打ちしてきた。

 彼女が指した方に目をやると、美しい女性が三人、こちらへ向かってくるところだった。ドレス姿なので見学の人達だろう。


「レイナード王子ー!」


 三人の美女がレイナード王子を見つけて手を振る。

 やっぱり、レイナード王子に憧れている令嬢達か。


 そう思ったのだが、レイナード王子は他の令嬢達の囲みから抜けて、三人の美女の元へ行った。


「レイナード王子! お弁当を持ってきました!」

「おう、悪いな」


 レイナード王子は三人の美女達とお昼を食べ出した。周りの女の子達は悔しそうに羨ましそうにそれを見ている。


「あの三人、レイナード様の妃達よ」

「え?」


 タラに耳打ちされて、私は目を瞬いた。


 妃達……そういえば、レイナード王子には三人の正妃がいるんだった。


 この国では王族は五人まで正妃を迎えられることになっている。

 私の家はしがない騎士爵だし、お父さんとお母さんは仲がいいから、奥さんが複数いるのって想像できないな。貴族の世界では当たり前なんだろうけれど。


 クロウが貴族じゃなくて良かった。クロウに私以外の奥さんがいるなんて絶対に嫌だもんね。


 クロウ、今度のお休みは家に戻ってきてくれるかな? 寮に入ってから、全然帰ってきてくれないんだもん。

 今日はクロウの部隊は市街地の巡回に出ているはず。帰ってくるのを待ってようかな。それぐらい、いいよね。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る