第343話 上に跨がられて
いつの間に寝ていたのか、ふと意識が覚醒した。はて?今日は誰と一緒に寝ていたっけな?・・・
うーん、いまいち覚えていなかった。しかし今言えるのは、彼女はかなり積極的であり、俺に跨り胸に手を付いていた。そして上下に激しく動いている。はだけた胸に当てられている手が温かく心地良い。
はっ!はっ!はー!と息が荒らい。1秒間に2回程だ。体重が乗っており、少し痛いぞ。あれ?服を着ていて、腰を振っている?違うな。
「行っちゃ駄目!まだ駄目よ!来てよ!しっかりしなさいよ。頑張りなさい!」
いつも奥手の彼女が俺の上に跨って激しく動いている?まだ駄目と。あれ?待てよ?よし、腰に手を・・・回せられなかった。というか腕も首も動かない。
よく見るとセレーシャが必死の形相であり、しかも泣いている。人工呼吸まで始めたのだ。腰を振っているのではなく、まるで心臓マッサージをしているじゃないか。何故?
そう、意識はあるが体は動かないのだ。セレーシャが必死に俺を蘇生しようとしていたのだ。意味がわからん。
周りから妻達の声が微かに聞こえる。段々声が遠のいていく。何かがおかしい。そして意識が遠のきそうになる。今、この場に地球人はセレーシャしかいないようだ。
「は、離れて下さい」
そう言い俺から離れたセレーシャは鉄貨を俺の胸に置き、雷魔法を放った。俺はのけぞったが痛いだけだった。2度繰り返した後、再び俺の腰に跨り、心臓マッサージを再開していた。
少しだけ意識がはっきりしたが、何とかセルフチェックをしてみたのだが、なんと心臓が動いていない事が分かる。
自分自身にヒールと欠損修復を掛けるも変わらない。これはまずい事になったぞ。
意識が遠のいて来て、思考も鈍ってきた。何とか最後の力を振り絞り、死者蘇生を使うとそこにはなんと俺の名前があり、どうにか選択した。
魔力が体全体にほとばしり、体が痙攣し始めた。そしてビクンと体が跳ねたが、俺に跨っているセレーシャが吹き飛ばされた。
まだ体が動かない。だが、急激に全身の痛みに襲われるも、心臓がドクン!と1度動いた。そしてゆっくりとだが、2度、3度と鼓動し、やがて俺の心臓が力強く鼓動を再開始したと理解した。
心臓が再び動き出したと理解した途端に、完全にブラックアウトしたのであった。
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