第279話 調査2日目

 俺がこの国の調査を開始したのは、元々俺がクロム国を目指していたからで、それ以上でもそれ以下でもない。理由は我が大陸に一番近いからだ。俺はちゃんとそこに着いていたのだが、それは町や村の名前から分かった事だ。


 寝起きにベッドの中でクロエを抱き締めながら話をしていると、王都へ向かってみてはどうかと言う。地図がないが街道を進み、街道沿いの札を見るなりすれば、何とか着くだろうと。尤もな事だ。


 そうして取り敢えず裕美を抱っこしてゲートできのうの町へ行く。

 やはり何も変わっていないので、街道沿いを進んでいると、ついに街道が交差する所に出た。

 時折セレナを呼んでは戻すのをしながら進んでいる。

 交差点ではドロシーを呼んで方向を確認したが、分岐の案内で王都の向き(方向)が分かり、2人を返した後裕美と向かう。


 裕美が不思議そうにしていた。


「魔物の一匹もいないなんておかしいわね」


「だよな。いくらなんでも変だよな」


 そんな話しをしていたが、程なくして王都に到着した。

 早速城壁の中に入るが、やはり誰も居ない。セレナや遠征組を呼んで調査開始だ。

 今回はドロシーを連れてきた。それは城の内部を見て回る為だ。


 一通り町を見るもおかしな所が無い。今まで避けてきたが民家を見る事にした。

 不思議な事に内側から施錠されている。施錠と言っても大げさな物じゃないし、力任せに開けようとすれば開かなくはない。但し大きな音が出るので、住人が寝ていてたら目が覚めるので、十分に機能する。

 施錠がされていない家もあるが、構造的に鍵を使って外から開けられないのだ。

 玄関ドアのドアガードやチェーンなんかがそうだが、中からしか外す事は出来ない。


 こじ開けた跡もないので、どうやって外に出たのか不思議だった。もしここで殺人事件が起こっていたら、密室殺人で名探偵に見てもらわなければならない。


 布団を見るとそこに誰かいてもおかしく無い感じで、畳まれていない。

 何軒か手分けして確認したが、やはり布団は使用中としか思えない状態だ。

 更に多くの民家でこれから洗濯するであろう脱いだ服やら、下着が籠などに入れられていて、洗濯待ちな感じだ。そう、生活感があった。

 中にはコップに飲み物が入っていた痕跡や、食べ掛けの食べ物も有った。


 更に厩舎をよく見ると、枯れ草が積まれている。正確にはどう見ても飼い葉を置く場所に置かれているのだ。確認すると飼い葉が枯れたのだろう。そんな感じの草だった。

 更に調査を皆にさせ、俺と裕美は漁村にゲートで行き、その後海沿いに飛んでいたが、間もなく港町に着いた。セレナに転移ポイントを取得させ、王都で調査している中から半分を呼んでこちらに回す。残りの半分にはドロシーとルシテルの護衛をお願いし、城の調査だ。


 俺が半分こちらに連れて来たのはジャックナイフ国の船が停泊していたからであり、統合する前に出発した船である事が分かった。


 船の中を見るとやはり人はいない。陸に上がっていたからか?


 埠頭には船からのロープがしっかりと巻き付けてあった。さらにこの船に荷は殆無く、交易品を降ろしたタイミングだったようだ。


 近くの倉庫の中を見ると、この船から降ろした荷物が積まれていて、中には食料もあった。

 思う所があり、最初に見た町の武器屋をもう一度を確認すると、武器が殆ど店頭に無かったのだが、前回見なかった倉庫を見ると多くの武器があった。

 まるで毎日夜には倉庫にしまい、朝並べ直しているという感じだ。

 宿屋にも行った。厨房でなくもっと奥の倉庫を見ると、多くの食材が並んでいて、日持ちしないのが腐っていた。


 俺は思い違いをしていた。

 宿も全部の部屋を見ていなかったが、未調査の部屋を何部屋か見ると、宿泊者の装備や服が見つかり、布団は畳まれていない。今まで寝ていました!というような布団の感じだ。そう、民家と一緒だ。


 そうしているとルシテルより急いで王城へ来るようにと、緊急連絡が来たのであった。

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