第275話 良くない

 朝目覚めると目の前に生の胸があったが、天井は見えない。

 知ってる胸だ。そりゃあ当たり前だ!昨夜いっぱい堪能したんだ。ちゅうちゅう。時間停止の副作用は今は発症しなくなったが、以前の後遺症で時々赤ちゃん帰りをしてしまう。

 特におっぱいを出して坊やおいでと言われるとばぶってしまう。純粋な赤ちゃん返りの時は記憶がある。副作用の時は記憶がない。だが、記憶がある赤ちゃん返りをすると、俺は猛烈に恥ずかしい。たたし、その時ではなく、事後に自己嫌悪する。だが、誰にもそうとは言っていない。


 今は膝枕をされているから見えるのは胸だけだ。

 何時の事だがじっとガン見する。するとステータスが表示され、確認するとちゃんと刻印持ちになった事が分かる。


 マイアは怒らせると俺でも近付きたくない位に機嫌が悪くなる。しかし普段は虫も殺せぬ穏やかな性格で、今はその天使のような笑顔を堪能している。


 お母様が食事を作ってくれたので4人で食べている。郷土料理だといい、家庭の味に俺は涙を流していた。普段は店の料理か調理人が作ったのを食べている。いつの頃からだろうか?というよりと家庭の味はエレクトラの母親の料理を頂く迄はこの世界に来てから食べていなかった。ナンシーがちょっとしたお弁当を作ってくれていたが、それ位で、こうやって家族との団らんはなかった。


 俺が泣いているので皆狼狽えていたが、こういう家族の団らんが欲しかったと話すとマイアも泣いていた。


 そうして美味しく朝食を頂いた後は、父上を伴い総督達との会議に参加だ。父上殿はガチガチに緊張していたが、皇帝の後ろ盾が有るのだから心配いらないと伝え、ようやく落ち着かれた。その前にマイアをワーグナーの自室に送り届ける必要があるのだが。


 俺がゲートを出すとマイアが先手を打ってきた。


「無理しないでね」


 俺が無理をすると予測し無理をするなと伝えてきたが、中々鋭い。見た目はぽわわーンとしていて、所作もおっとりとしてはいるが、中々周りを見ていたり、見た目に油断しがちだが、紛れもない実力者だ。


 俺は頷き、部屋を出る時にそっとキスをしてから出掛けた。


 会議の場所は約1か月で持ち回りで、今月はボレロだった。

 日常の話題と議題を片付け、いよいよ本題だ。

 貿易船について確認と報告をするようにとの指示を前日に出しており、概要だけでもまずは掴むように指示をした分の概要の報告だ。


 結果は芳しくない。

 どの地方の港も多少の前後はあるが、この1ヶ月の間は船が来ないのと、送り出した船が寄港予定を過ぎても一向に帰っても来なくなった。

 向こうの問題であればこちらの所属の船はとんぼ返りで帰ってくる筈だが、例外なく所属の港に戻ってこないという。


 各総督の報告に皆驚いていた。

 1地方の問題であれば何かちょっとしたトラブルで足止めを食らったとも考えられなくも無いが、取引先の町は全ての地方が別の町であり、ダブってはいないのだ。

 おかしいのは明白だ。

 俺は念の為に聞いた。


「こういう事はよくあるのか?」


 皆が首を横に振る。


「つい数日前に今後の事を考えて、向こうの大陸に俺が単独で行ったんだよ。どこの村かは分からなかったが、小さな漁村で漁船が放置されている状態で誰も居なかったんだよ。廃村になり放置されたのだと思っていたが、どうやら違うようだな!取り敢えず船の出港は一時中止だ。俺が直接探ろう」


 タオ殿が反対した。


「ランスロット様、また無理をなさるのではありませんか!?」


「どうだろうな。状況から向こうには魔王がいる筈だから、遅かれ早かれ無茶はせざるを得ないからな」


「魔王絡みだと仰るのですか!?」


「いや、違うだろうな。有るとしたらこちらに攻めてくるだろうな。取り敢えずメンバーを厳選して調査をするよ」


 そうして今日の会議は終わった。マイアの父親には交易を再開する時の為の準備をお願いした。また、総督達に信頼の置ける有能な者とし、不正の件も伝えた。

 それと引き続き調査についてだ。

 当面の活動資金を渡し解散となった。余裕がないのだ。


 どう見てもおかしい。すっかり忘れていたが、あの漁村が廃村じゃなく、別の要因で住人がいないとしたら何だろうか?


 いやな予感しかしない。

 行きたくはないが、行かざるを得ない。放置すると余計厄介になると感じている。

 折角ダンジョンから開放され、俺の大好きな自堕落な生活をしていたのに、ちょっとした骨休みにしかならないようだ。


 戦闘系の人員を呼び、人員をどうするか協議をする事とした。


 セレナも一度向こうには行って貰う。一度でも行けば応援を連れて来る事が可能だからだ。


 俺は唸っていた!もう少し休ませてくれと!せめて1年位は!と。そんな暇を与えてくれる作者な訳がないのを理解していない志郎であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る