第259話 焦らず

 朝目覚めると、椅子に座っている裕美が見えた。心配そうに俺を見ていたが、ずっと看病してくれていた。


「良かったわ!目が覚めたのね」


「大袈裟だな」


「何言っているの!今は夜よ」


「えっ!?俺は疲れていて起きられなかったのか?」


「違うのよ。いくら起こそうとしても目覚めなかったの」


「またもや1000階層の時のようなダメージかな?迷惑を掛けたね。じゃあ腹も減ったし夕食にしようか」


「今回は戦闘が短かったとはいえ、丸1日目覚めなかったのよ。心配したんだからね」


 俺は裕美に言わなかったが、味覚がおかしかった。前回は辛みが感じられず、酸味が甘味に変わったが、今回は味覚が失せた。


 風呂は長風呂になった。2人でゆったりと湯船に浸かる。そんな時間が心地良かった。


 寝る前にお礼でマッサージをしてあげた。


 誰ですか?性感マッサージと言うのは?残念ながら真面目な凝りを解すマッサージですよ!


 裕美は徹夜で看病してくれていて、余程眠かったのかマッサージ中に寝てしまい、穏やかな寝息を立てていた。


 とはいえ翌朝からダンジョンアタックを再開していく。


 499階層は恐ろしかった。

 そいつらの群れを見た瞬間、2人して泣きながら抱き合い、そしてどちらか?いや、2人共失禁した!そんなレベルだ。


 体長1m位で黒光りしているあれだ。そう、ダメな奴だ。


 あいつらは羽があるので、俺が飛んでいても向かって来るんです!ごっきーきもいっす!


 久し振りにサラマンダー先生の出番だ!俺の護衛と殲滅部隊を送り出した。何でずっとしていなかったのか不思議だ。


 489階層からは別の奴に変わり安堵した。だが、ある意味恐ろしかった。


 しかし、裕美は震えている。俺が反応したからだ。夜が怖い。


 美女と美少女の大群だ。おっさんには効果抜群でした。しかも誘惑されるのだから堪らない。


 涎やらなんやら色々出ました!


 途中で目隠しをされ、裕美に誘導され飛んで行くが、時折壁や天井にぶつかりまくった。

 勿論俺は攻撃なんて出来ません!裕美は鬼の形相で攻撃しまくっていた筈だ!音がガンガン聞こえたからね。


 シェルターにて裕美のご機嫌取りに奔走した甲斐が有ったのか、ごっきーのトラウマか妙に優しかった。


 お互い今日の事は何も言わない。記憶の封印をしたい位だ。


 寝る時は裕美は強く抱きついて震えていた。怖かったのだと思いたい。俺が美女を見て反応していた事の怒りではないと信じたかったが、結局寝付くまでしがみついていた。


 でもまた明日は美女編なんだけどさ。ごくり。


 俺はしょうもない奴だよな。


 一応皇帝なんだけど、常に女の事を考え、対処に振り回されているのだ。


 裕美は明日機嫌が良いかな!?と考えていると、やがてお互いに寝むりについていくのだった。

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