第229話 今後の事
俺は目覚めるとルシテルを抱きしめていた。なぜこの状態なのかが理解できていなかった。確か城に突入し、謁見の間にいた筈だが、その後の記憶がない。
ここは知らない部屋で、内装や丁度品や今の状況、人の気配から考えるにルシテルの部屋だと思う。
問題はルシテルが泣いている事だ。
俺は現状を余り理解しておらずオロオロしていたが、ルシテルの涙をそっと拭き、やさしく丁寧なキスをする。
先ずは話を聞かなければだ。
俺は後ろから抱きしめ、ルシテルは俺に包み込まれている安心感からか段々落ち着いていき、徐々に何が有ったのかの説明を始めた。
城にいた者は全て魂喰いに魂を喰われ、傀儡にされていた。俺が魂喰いを浄化をしたので魂が存在しない体のみが残されたが、勿論心臓は止まっている。
漸く冒涜された肉体を本人に返してあげられるという。
ルシテルの話から、俺は高校生達が死に絶えたその様に耐えられず、ブレーカーのようなのが一旦俺の精神をシャットダウンさせたようだ。そうしなければ俺の心は崩壊していた可能性がある。そして今目覚めたのだ。
ルシテルは身内を全て亡くしていて、最早俺が唯一の家族だ。俺を求め俺もルシテルに逃げた。ルシテルは多くの死体を検分した。王族の役目としてだが、第一王女はジャックナイフで、その他の親子及び兄弟姉妹の全ての死体をその目で見たと。
唯一の王族が取り乱す訳にもいかず、今まで気丈に振る舞っていたが、本来は心根の優しいおっとりとした性格だ。
「良く耐えたね。もう大丈夫だ。俺が一緒に背負ってやる。今は俺に全てをぶつけろ。俺の胸を涙で濡せ。大丈夫。全てを受け入れるから」
ルシテルは大いに泣いた。年相応に泣き、そして俺を求めた。俺の庇護を。
その後お互いに愛を確かめ合ったが、果てた後正気に戻り、仕切り直して今後の事を話し合った。
まずは魂食いはバルバロッサ王家に伝わる召喚の秘技で有ったが、俺の見立てでは理由は分からないが失敗し、真っ先に国王が乗っ取られ、王家の面々を時間を掛けて全て乗っ取った。俺達を召喚した後は力を急速につけて、高校生達を喰い尽くした後に世界制覇に乗り出した様だ。
また、国王は3年前に既に喰われていたとしか思えなかった。
幸い全ての魂喰いを駆除したが、払った代償は大き過ぎた。この大陸全土を大きく疲弊させる悲惨な戦争となったが、遂に終息を迎えたのだ。
まずは即刻バルバロッサの併合を発表する。幸いこれで大陸を統一出来るので、兵を増やす必要がない。
全ての国境を取り払い、国境警備隊も解散だ。
国民へは魔王軍の差し向けた魔物に王家がルシテル以外の全員が滅ぼされ、国王に模した魔王の配下に支配されていた。そうして魔王軍がジャックナイフを滅ぼしたと発表し記録をする。そして俺が城に巣くっていた魔王軍を駆逐したと発表する事とし、囚われていたルシテルを救出したと。
バルバロッサは早々に魔王軍に滅ぼされ、魔王軍の領土となり近隣へ戦争を仕掛た事としたのだ。
夜が明けてから城や王城街の死体の処理と、皇帝ランスロットの直轄領として併合した旨の発表を行う。
騎士団や兵はトマスを騎士団長として率いさせて軍を掌握する。チャハカーンは約束通り娶るので、ルシテルと共にこのバルバロッサの実質的な統治を行って貰う事とする。
生き残った中で政治に長けた者を見付け出して宰相を置く事を検討している。それも早急にだ。少なくともバルバロッサの運営を行う者を設定しないと生活に支障が出るし、俺はキングのおっさんに会わなければならない。とてもではないが今の段階で直轄領を本当に直接治める事は不可能だ。それに何よりも俺は政治に疎過ぎる。
それと恐らく大陸の外に出る事となる。
本物の魔王を倒す為だ。グリーンウッド王が招いた魔王が何処かにいて驚異になっていると心が警笛を発していたからだ。
ただ、長年各国が争いを繰り広げていたが、俺が統一した為に軍備を減らす事ができる。新たに兵を増やす必要がなくなったからだ。
その為その人員やお金を街道整備等に注力する事が可能で、急激に経済発展をしていくと予想している。勿論復興が優先だが、少なくともワーグナーは無傷だ。
今後の事についての話をしていたが、お互いあくびをしていたので一旦中断し、もう一度愛し合ってから寝る事にしたのであった。
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