第175話 出立
朝目覚めると、穏やかな笑みでアリアが俺を見つめていた。
無事に刻印が刻まれている事が確認出来た。
「おはよう。愛しい方」
「おはようございます!ランス」
「体は大丈夫かい?」
「まだ少し怠いのですが、これが魔力が馴染む為の怠さなのですね?」
「うん、そうなるね。今から朝の訓練をしてくるね」
名残惜しそうにしているが、キスをしてから屋敷に戻り、朝の稽古と日常のヒトコマがそこにはあった。
昼食を済ませ、セチアと暫くのお別れになるのは寂しいものの、彼女は自分の成長の為に頑張ってくると、出発の準備に余念がない。
今日はオリヴィアの問題を片付けなければならなかった。
S級以上で受付嬢をしているのがおかしいので、ギルドを退職か、休職して冒険者をする事になる。
まあ、今後の事を考えるに、退職だろうな。あの冒険者達はさぞや残念がるだろうが、現実は厳しいと知って貰おう!
また、後任の専属者をどうするのかになり、人選はクロエの裁量に委ねる事にした。正直誰でも良い。
カービングへの出立は昼頃なので、一通り装備等の見直しを行っている。すっかり忘れていたのだが、ロードオブナイトに魔石で強化を行ったり、屋敷のメンテナンスを少ししてみたりしている。それと執務室で神の手の訓練をちょいちょいと練習している。
ふふふ皆驚け!とユリアの右肩を軽く叩く。振り向くと勿論そこには何もない。続いて左肩を。そしてお尻を撫でる。
「ぎゃ~~~~~」
叫んでどこかに行ってしまった。ぎゃーだって。きゃーじゃないんだね!とメモメモ。
俺の悪戯心は止まらない。
ホーネットが見えた。「フフフ!ヘルムのお返しだ。喰らえ!」
心の中で叫び、浣腸オオオオオとお尻に指をぶすっと。
「うげえええええ!出たあああぁ」
お尻を押さえてどこかに行くが、一緒に居たアリゾナが身構える。
さすがに鋭いので撤収。
次にクロエだ。やっぱり胸だよね。モミモミ。
「めっ!夜まで待ちなさい。いいわねランス!」
何故かばれた。
懲りずにオリヴィア。鼻を摘む。
「ぶえ~~~」
変な声を出して笑えた。
じゃあ次はロトナだ
やっぱりモミモミ。
ビクンとなり、震えて怖がっている。おお!意外と女の子らしいな。
ドロシーは・・・・
「ランスロット様のエッチ!こんなのじゃなくて、ちゃんと手で触ってください!」
何故か一部の人にはばれるんだよな。中々思い通りに制御出来るようになってきたなと一人執務室でぼやいていた。
じゃあ最後はセチアだな。
服を掴みセチアの前に持ってきて、右に左に服をゆらゆらと振る。
セチアは顔を引きつらせながら叫んだ。
「いや~~~~!でたー~~~~!きゃ~~~」
叫びながらどこかに消えていった。
慌てているなあ!と思っているとふと気が付く。
「あれ?俺は起きていて、しかも今いるのは執務室だよな?なんで皆別の部屋にいるのに、見えていたんだ?」
悩んでいると慌てたセチアが駆け込んできた。
「ラ、ランスロット様、ふ、服が飛んでいたんです。怖かったんです」
ちょっと罪悪感が…ごめんなさい。
「驚かせてごめんね。ギフトの練習をしていたから、何か掴んでいた気がするが服だったんだな。まだうまく制御出来なくてさ」
セチアがジト目をする。そして次々と皆が駆け込んできた。
皆異常を訴える。俺はそ知らぬふりをする。
「俺の所は何ともないぞ。そんな事より、そろそろ出立の時間だよな?」
セチアの目線が痛かったが、皆首をかしげながら出て行った。
今日の出立は俺も同行するようにしている。今日だけなのだが初日は王女達の馬車に同行する。
アリアはまだ歩くのも辛そうなので、俺が直接馬車にお姫様抱っこで乗せている。馬車にドロシー、セチア、アリア、俺が乗り込む。そしてクロエとオリヴィアが馬車に乗り正門迄同行する。
アリアの様子から、昨夜何があったのかは皆察していて馬車が動き出すと祝いの言葉を掛けていた。
「おめでとうアリア。これで私とソウルメイトね」
クロエに言われ真っ赤になったアリアが可愛かった。なんか穢してしまったようで居心地が悪かったが、アリアは良くも悪くも大事に愛情を注がれて育ったのだなと分かる。
そしてオリヴィアとドロシーがモジモジしている。
正門の所で手続きに入っているので、俺はクロエとオリヴィアをギルドに送り届けて、正門に戻ったのだが、既に俺は王扱いだった。
カービングまでおよそ2週間の予定だ。
馬車の中で俺は腐っていた。3人に求められ、いちゃいちゃして、ぐたーっとしている。緊張感がまるで無かった。
何事もなくと言いたい所だが、王都を出て30分位で魔物500匹位の群れに襲われ、兵士と共に俺が戦った事が一番大きい。王都から逃げ出した奴らがいたのだ。
そうこうしていると隣町に着き、本日の野営となった。
俺はセチアと同室、ドロシーとアリアが同室となり、暫く会えないセチアが珍しく甘えて来たので、暫しの別れの前に、セチアの希望に沿いお互いの愛を確かめ合った。
俺も久し振りの馬車で疲れたのかその後は早々に眠りに落ちたのであった。
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