第110話 敵襲への備え

 執事が門を通り屋敷に入ると、俺も後を付けて屋敷の中へ入った。流石に隠密はひと味違う。


 屋敷の奥にも侵入して主人の部屋の近くに隠れたと言うよりも隣の部屋だった。


 どうやら主人は女で、しかも件の変態貴族と判明したのだ。


「何をやっているの!たかだか冒険者の小僧相手にみっともない。次のオークションはまだ10日も先なのよ!滅茶苦茶にしたいのよ!美しいか、顔が切り刻まれて、手足を無くして蛆虫みたいに蠢く姿をを見たいのよ!何としてでも連れてきなさい。もうあいつらじゃ・・・」


 屋敷の中を色々物色する。

 もういいやと思い、使われていない部屋からギルドの裏手にある人気の無い所にゲートを出して、その後屋敷に戻っていく。


 まだ皆出掛けているので、約束通りエリシスを可愛がってあげて、お互い満足してから屋敷の防衛について今いるメンバーを集めて話し合った。エリシスを可愛がっている場合ではないのだが。


 恐らく今晩、遅くても明日中には襲撃されるで有ろうと思われる事と、ウリア達を滅茶苦茶にした変態貴族の事を話した。


「君達を売れと言ってきた奴等だが、命令したのはウリア達を滅茶苦茶にしたあの変態貴族だったよ。あいつらは変態貴族に君達を絶対に連れてくるように厳命されている。恐らく無理矢理兵を連れてくるのだろう。先の盗賊もあいつの仕業だと断定しても良い。奴隷商を襲わせて、奴隷を確保した頃を見計らい迎えを寄越していて、迎えを待っている間、あそこにいたのだと思う。最早許せる手合いではない。先ずはここを守る。向こうが襲撃してきたら此方も反撃するし、反撃は奴等を殺す事を意味する。問題は非戦闘系の為に戦力の劣るアヤメ達をどうするかだ!」


 一呼吸置き、皆を見渡した。


「皆は闘うか逃げたいか?」


 俺はそのような事を聞いたが愚問だった。皆戦うというので俺は頷いた。


 非戦闘要員をどうするかについては屋敷にて皆で守ると言う事になった。逃げ隠れはしない。


 取り敢えずは昼食を食べる事として、急ぎ食べてから俺は先ずは鎧を着込んだ。


 俺の気配察知ならば屋敷の中にいれば外の気配を感じ取れる。外出組に念話で警戒を呼び掛けて、現在地を確認して一旦ギルドの専用者部屋に集まらせた。俺がギルドに迎えに行き、人気の無い所に移動してからゲートで屋敷に連れ帰った。


 買い物は皆一通り終わっていた。戦闘要員が先に食事をして防具を装着して襲撃に備えた。


 レジアナとリリアはメイドで、リムルは調理人として戦闘には加わらせない。勿論クレアの母アイギスもだ。


 なので護衛にセレナとシータ、エリシス、クレアの4人には屋敷の中にいて貰う。


 俺が戦闘開始時にアイスウォールで建物を囲って守るが、完全に囲えていなかったりするだろうから、もしも隙間を見付けたりすると、どこからともなく侵入するかも分からないので護衛は必須だ。いざとなったらセレナがギルドの専属室にテレポートして逃げて貰う。


 セレナは一度でも行った事の有る場所ならば何処へでもテレポートができる。しかも、手が触れている相手を連れて行けるので、いざという時はギルドの専属者室に逃げる指示を出している。


 全員が食事を終え片付けを終わると、非戦闘要員も鎧を付けて襲撃に備えた。

 今日の夕飯は作らずに買い溜めしてある食料か、食べに行く事になりそうだとリムルには伝えてある。


 そして16時頃奴らはやって来た。人数は50人程。なりふり構わない感じだ。鎧は冒険者が使うような皮鎧だが、武器はお揃いのロングソード。鎧はともかく、武器はそう簡単に変更はしない筈だ。やはり相手は変態貴族オルクス家の私兵のようだ。


 屋敷の門の所に札を立てて打ち込んでいる。警告文だ。


【本日は如何なる件でも許可なく敷地に入る事は敵対行為とみなし、命を持って償うべし】


 こんな感じで記載して、冒険者ギルドにも届け出を済ませており、返り討ちにする準備は出来ている。


 俺は門から入って直ぐの所で立ち、警告を発した。周辺の家々も様子を伺うために、窓の隙間からこっそり覗いている者もいる。


 その為殊更声を大きく発した。また、俺は先日セレナとのデートの時に買ったフルプレートメイルを装着している。

 白に銀のステッチが入った派手な見た目重視な代物だ。

 威圧を出すのに良いと言うので買っていた。性じゃなくて聖騎士って感じに見えるらしい。以前セレナが力説していた。


「これ絶対に志朗に似合うよ!かっこいいんだから、見た目が良いのを着て欲しいなぁ!ねえ!良いでしょ?見たいなー し・ろ・う・さ・ん♪」


 セレナのおねだりに負けたんだった。あんな目で言われたら落ちますよ。俺には耐えられなかった!勿論強化済みだ。


「貴様達がオルクス家の手の者で有るのは既に判明している。主人に伝えるがよい。S級冒険者に喧嘩を売った事を後悔するがよいと。して貴様等は大挙して更に武装までして何用だ?」


 そう言うと、俺はかなり強く魔力を込めたアイスウォールを唱え、門から見える建物の前に屋敷の高さを超える分厚い壁を出した。そして長槍を振り回し、槍を後ろ手に構えて格好をつけた。先日セレナに決めポーズを振り付けされていたのだ。まあ、挑発にはなったろうな。


 すると一人のというか、先の老執事が出てきたので有った。

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