第108話 日常の終わり

 day28


 刻印の儀式は後1人を残すのみだったが、一旦止めて皆で朝食の食卓を囲んだ。食事を終えて皆に指示を出した。

 町を散策して地理を把握するようにと。


 目的の一つに主要な買い物エリアや店を把握する事等だ。

 何かの時に地理を分かっていないと不都合だからだ。避難経路や万が一戦いになった時等の不測の事態に備える為に地理を把握しておいて欲しがった。


 俺は4人目のエトワールを迎えに行き、お姫様抱っこで寝室に連れていった。

 彼女は申し訳無さそうにしていた 。


「あ、その、大きくて申し訳ない。可愛げがなくて申し訳無いです。こんな大きな体で「そんな事は無いよ。エトワールは鍛え上げられていてすらりとした素晴らしい体つきじゃないか。凛として綺麗だよ。こんないい女は滅多にいないよ。確かに一般的な女性よりも背が高いけど、俺より低いじゃないか。一緒に歩いたらバランスが良いよ。君みたいな女は好きだよ」」


 彼女の言葉を遮って誉めた。

 俺はモデルさんよりも、アスリートの方が好みなので、フレデリカやレフトアイ、トリシアは特にタイプなのだ。


 彼女は泣いて喜んだ。


「いつもデカ女とか言われていたのに、お世辞でも誉めて頂けるなんて恥ずかしいです」


「君は自分の素晴らしさを分かっていないよ。俺は君が好きだ。すらっとしていて無駄な肉がない。靭やかな佇まいが好きだ。俺のエトワール。愛してやる。共に生きよう」


 そう言うと泣きながら頷いた。

 そうして刻印の儀式を終えた。


 昼過ぎに目覚めて遅い昼食を食べ、彼女を部屋に連れて行った。

 3人共そこに居て、部屋に入ると抱きついて感謝を述べていた。


「明日は服を買おうね。今日はしっかり休むんだよ!命令だからね!」


 俺は良い命令をして部屋を引き上げた。


 執務室に戻ると皆が待っていた。これからの予定を急ぎ決める。流石に腰が痛く辛かったが、おくびにも出さない。

 俺とフレデリカ、リギア、シェリー、クレアはギルドに盗賊討伐を報告。

 他のメンバーは分担して買い出しと掃除、家の飾り付け等をお願いした。


 そして今はギルドにいる。

 ギルドの解体場所で問題が発生した。

 最初の盗賊もどきが、この国の貴族の私兵と分かったからだ。ステータスカードに盗賊と出ているので問題は無いのだが、死体を持ち帰った為見知った人が現れたのだ。

 さる貴族の令嬢の私兵だそうだ。

 目的が分からないそうだ。

 最後に目撃されたのは門番で、1週間前に部下を20名位連れて町を出ていった時だった。


 既に騎士団に通報しているという。

 初動捜査で令嬢からの話が聞けていて、丁度1週間前に財政難で解雇したから町を出たのでは?とわざわざ雇用契約書を見せて証明したと言う。


 どうも胡散臭い。書類上はもう自分の所を解雇したとは言え、元の雇用主だろうに。


 しかも奴隷を奪い手を出していない。

 令嬢と言うから生娘を献上と言うのは違うよな。解雇後の事は本当に知らないのかな?


 オークションに出すにしろ、奴隷商人でなければ出品も厳しいしな。

 こっそり何処かの貴族に売るのか、既に雇われていたのかだな?

 まあ、悩んでいても仕方がないが、要するに討伐して俺が彼女達を頂いただけだ。


 次に第2陣の盗賊。

 死体を渡したが討伐依頼の奴等で間違いなかった。


 査定は懸賞金が6100万G。依頼の報酬が800万Gなので、6900万G。金は1200万G有ったから8100万Gの稼ぎか。さて配分を考えないとな。


 今回は新入りには30万G、他は100万Gを分配した。俺個人は1000万G

 残りは屋敷のと言うよりも、クランの運営用かな。クランとはパーティーの人数の縛りを越えた集団である。特に規程が有るでもなく皆が勝手に名乗っている。要は慣習でしかないが。


 現在俺が皆の生活を経済的に支えている。


 個人に持たせるのとは別にナンシーとシータ、エリシスにお金を分配した。

 もしも突然俺が元の世界に戻されても困らないようにだ。


 次にダンジョンについてだ。既にナンシーから報告がされていた。

 もう一度コアを見せて欲しいとギルドマスターに言われて見せた。

 本物と確認したら満足していた。


 後出しの指名依頼を出してくれた。その為の確認だった。

 報酬は1000万G


 まあそんな所か。


 屋敷に戻ると何やらエリシスが来客の応対をしていた。

 執事服を着た老紳士と中年のメイドだ。

 俺が不在だと言うので、帰ろうとしていた所だった。


 軽く挨拶をして応接間に案内させた。

 俺は一応客が来ると偉そうにメイド達に命令をする事になっている。全員に絶対的な君主であるかの素振りをする事に決まっていて、かなり横柄な態度を取る。時には殴ったりもだ。勿論その後は特別ケアの時間を設ける事になるので、むしろ皆ウエルカムなのだ。演技だと分かっているからだ。因みに唾を吐きかけるのはご褒美にしか思われないらしい…


 応接室にエリシスをメイドとして控えさせ、話を始めた。


「初めまして。私が当屋敷の主のS級冒険者のランスロットです。今日はどのようなご用件ですか?」


 老紳士が話を切り出した。


「初めまして。私はさる公爵家の使いの者でございます。今日はお願いが御座いましてお伺いしました」


「お願いとは?」


 俺は既に何を言われても断るつもりだった。何故ならお願いがと言いながら名乗らないし、何処の家の使いかも言わないからだ。


「ランスロット殿は何でも多くの美人奴隷を所有されているとお聞きします。どうか我が主に何人か献上して頂きたい。無論初物で無い事も理解してのお願いで御座います。無論謝礼もそれ相応にご用意させて頂きます。決して悪いお話しでは無いと思います」


「条件は?」


「出来れば4人程を1億Gでどうでしょうか?」


「白金貨の枚数か?」


「ご冗談が御好きなのですね!」


「冗談を言う顔に見えるか?悪いがお帰り願おう。話にならない。誰も売る気は無いし、ここには奴隷は1人も居ないんだ。無駄足だったな」


「な、な、何をふざけた事を言っている!調べはついているのだぞ。そいつはこの前の奴隷オークションで貴様が落札した奴隷ではないか。小僧、嘘をつくんじゃない!儂この目で見たのだぞ!」


 本性を現した。


「嘘も何も彼女の何処に首輪が有りますか?ほら、無いでしょうに。彼女は確かにオークションで購入しましたが、、体の相性が良くて俺なしでは生きられない体になってしまい、処女を頂いた後に奴隷解放しましたが、その後も俺に仕えているんだ。エリシスおいで」


 すかさず念話を送り込む


「済まない。下衆を演じるから、話を合わせて俺におねだりをする痴女を演じてくれ」


「了解しました。お礼にこの後たっぷりと可愛がって下さいね」


 エリシスが来ると俺の前に座らせおねだりをさせた。

 おねだり通りに服に手を突っ込み胸を揉む。


「見ての通りですよ。俺は彼女達を首輪じゃなく、こっちで支配して、自らの意思で仕えさせているんだ。他の奴の小さいのじゃ彼女達は満足しないぞ」


 下衆を決め込む。


「誰に楯突いたか覚えていろ」


 捨て台詞を言いながら出ていった。


 奴が出ていくと俺はエリシスに謝罪をして間髪入れずに隠密を使い尾行した。


 程なくして貴族の屋敷に着いたが、そこは問題のかのオルクス公爵家の別邸だったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る