第95話 欠損奴隷を引き取る

 クレアの母親だと思われる者と向き合うべくその姿を見たが、涙を堪えるのがやっとだった。


 顔は半分位が酷い火傷で、目を潰され、鼻も耳も削がれている。体に至っては乳房がない。切られた後で無理やり回復魔法で傷を塞いだ感じで、喉も潰されていて声が出せない。


 それに手足は全て無い。

 クレアに対して母親がどうなっているかについて、とてもではないが言えない。惨さは覚悟してはいたが、それ以上であり、クレアの母親と理解して更に狼狽えた。

 幸いこの状態に狼狽えていると思われたようで、誰にも悟られなかった。


 そしてもう1人も酷かった。箇条書きにするとこうだ。

 手首及び足首が無い

 胸は火傷が酷い

 両方の乳房が切り取られている

 全身に切り傷がある

 特に顔は念入りに

 歯は全て抜かれている

 髪は無い

 22才で処女

 目は片眼が残っている

 何でもオークション奴隷であり、絶世の美女として高値を付けた。ここの奴隷商がかなり目を掛けて育てた逸品だったが、4年前に買われてからというものの、ずっと折檻を受けていたそうだ。


 俺は堪えられずに泣いてしまった。

 涙を流しながらこの奴隷達を引き取ると言うも、死なせてあげるのも慈悲だとして奴隷商が反対した。だが、回復魔法の実験台にし、回復させる事が出来なければ自らの手で楽にするからと告げた。どうなっても知りませぬぞ…貴方には殺せぬと思うがとブツブツと言ってはいたし、納得した訳ではないがと言うも客が買うと言うならば売らぬ訳にはいかないとして、結局売ってくれる事になった。各々金貨1枚であり、これが最低価格だそうだ。


 服を着させるようにお願いし、俺の馬車で連れ帰る為の準備をしてもらう。


 怒りで震えていたようで、誰も俺に声を掛ける事が出來なかった。


 次に他の欠損奴隷を見る。先ずは女性からだ。

 達磨状態の者が3人もいた。

 なんでも先程の変態貴族の部下や取引先が代理で買っていたそうだ。既に変態貴族には奴隷購入について奴隷商から禁止を申し伝えられているからだ。見抜けなかったらしい。

 驚いた事に先日のオークションの奴隷と俺にだけ伝えて来た。つまり俺が見た事のある者達だ。

 3人共胸が切り取られており、顔も潰されていてかなり酷い。


 オークションの時の番号だとこうだ。

1番 貴族の娘

2番 商人の娘、

6番 元盗賊

 3人共にやはり生娘のままで各々金貨3枚だ。


 他の欠損奴隷はこうだ。


 両目を怪我で失くした26才

 奴隷のメイドだったが、その屋敷の主に犯されている所を夫人に見付かり、その場で怒りから目を切り裂き、その主は夫人に離婚を突きつけられ、止む無く奴隷商に売った。逆恨みで酷い。

 金貨20枚


 猫耳娘14歳処女

 戦奴落ち

 戦で右腕を失くした為転売された。

 性奴隷か冒険者の荷物持ちが想定されている。

 モフリ対象かな?顔はそこそこ可愛い。

 利き腕の欠損の為価値が低い。金貨300枚


 次が24才 両脚が膝から下が無い。

 元貴族の料理人。


 きりっとした中々の美人である。残念ながら貫通済み。

 

 招いた貴族の料理に嫌いな物が入っていて、腹いせにその場で脚を切られてしまった。しかも賠償金を請求され、支払える訳もなく理不尽に売られた。金貨150枚


 最後が エルフ46歳

 見た目20歳位

 右腕と両胸が無い

 無理矢理徴兵され戦に行くも敗戦国側であった。罰として胸と腕を切り落とされ、更に戦犯として奴隷落ちになり売られた。

 ふんだり蹴ったりである。

 顔は無傷。

 冷たい感じで絶望しており、希望が無いからか生気の無い状態。綺麗な顔立ち。貫通済み。

 金貨200枚


 全て買うと伝えた。


 続いて男性


 執事向けを聞くと執事長向けがいると言う。


 両目と左腕を失っている。57才

 元剣士

 元々奴隷で、貴族の屋敷を任されていた執事長。

 先日のオークションに向けて王都に向かっていて、盗賊に襲われた貴族に同行していた者の生き残り。

 主人を守り戦ったが腕と目を失った。

 金貨100枚


 若いのがいた。


 犯罪奴隷で24才

 冒険者に同行していたが、森で魔物の群れに遭遇してしまい、捨て駒として足留めを命じられ、左脚を失いながらも何とかその群れを倒し、這々の体で町に戻った。但し主人達はオーガに殺されており、主人無しになり国の所有奴隷となった。そして欠損奴隷となったが脚が無いので買い手がない。

 犯罪の理由は貴族に町中で因縁を付けられ、冤罪で奴隷になったと。


 もうひとりの若いのだ。

 19歳の冒険者

 両目が欠損し、脚もびっこをひく。歩く事は出来るが走る事は出来ない。


 農家の口減らしで子供の頃に奴隷になり、貴族に買われてからはボディーガードをしていたが、旅の途中で盗賊に襲われ、その時に目を失い、更に脚も怪我をした。そして後遺症を負ってしまった。


 そんな感じだった。

 金貨100枚


 最後の一人が32才の土と火の2属性の元宮廷魔術師


 王のお気に入りの奴隷に手を出したとして、王に対する不敬罪で両腕を切り落とされて売られてきた。


 金貨240枚


 欠損奴隷は以上だった。

 女性の奴隷に対する仕打ちが酷い。


 皆中々値が付かず、男性はあと3週間~5週間で処分されるところだったらしい。


 俺は全ての欠損奴隷を引き取ると伝え、奴隷商人が警告までしてくれたが頷くだけだった。


 シェリーに状況を伝え、男部屋を1室、女性部屋を1室、そして個室を1室準備するようにお願いをした。

 又、ニーベルング達も1人1部屋にするように指示をし、これから購入した奴隷達を連れて帰るからと、お風呂の準備もお願いした。


 帰宅後は俺のマジックシーンに皆がめろめろになり崇められるの図が待っていると普段の俺ならばきっと股間を熱くしている。しかし、そんな気分ではない。早く屋敷に帰り、一刻も早くまともな状態にしてやりたい。

 皆の状態は酷いが、俺ならば何とでもしてやれる。


 クレアの予知は恐らく母親の事だろう。

 これは有難いなー、親子丼だなあとゲスに思うが事実で有る。回復させる事を考えていたら、可能だよなと落ち着き、段々とゲスになっていく。

 クレアの容姿から想像するに、その母親はさぞや美しいのだろう!。じゅるるる。

 34歳と言う事は、16歳でクレアを産んだのか。

 可能なら屋敷を任せよう。うーん、熟女か。体は18歳だが、こちとら45歳のおっさんだから、勿論守備範囲内だ。

 しかし、お馴染みの初心者ダンジョンにだけは全員行かせよう。戦闘が苦手でも関係ない。全員レベルリセットをして、ニーベルングに率いらせ、過剰な武器を与えればまあ大丈夫だろう。


 男の奴隷の扱いは爺さんには執事をさせるとして、3人にはパーティーを組ませて稼せがせるか。買い戻しをさせてやろうと思う。

 俺の奴隷だったらあほみたいに強くなれるだろうけれども、そう言えば執事の爺様って剣技の指導って出来るのだろうか?


 等と考えていると、出発の準備が出来たというので屋敷に新たな奴隷を連れ帰るべく、奴隷商を後にするのであった。

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