第2話 良い言葉だ
魂は眠らない。
ならば魂に休息は訪れないのかといえば、そんなことはない。
限りなく自意識を薄め、自然と同調するかのように無思考状態ならば、魂は安息を得るのである。
この状態を一般に、「死の一歩手前」、あるいは「悟り」という。
いつから自分が悟りを開けるようになったか定かではないが、サービス残業を終えた直後は毎回このような状態であったのは覚えている。
つまり日本では働くだけで悟りを開ける土壌が既に完成しているということだ。
仏教徒の皆さんには是非日本で働いていただきたい。
生憎俺は無宗教無神論者であるので、お先に
だが最近の経験でオカルトも強ち嘘ではないのでは、とも思っていたりする。
なんといっても俺自身、魂だけの存在になっていたり卵子に憑依するぐらいだ。
もしかしたら地元で新たな都市伝説『
下らないことを考えていると魔力と魂力が回復していくのを感じた。
その回復メカニズムは全くの不明だが、感覚的には卵子の核から魔力が滲み出るように
理解が及ばないが、そもそも俺の思考能力は並なので仕方ないだろう。
できることはできる、できないことはできない。
素晴らしい言葉だと思う。
なので俺もその言葉に倣い、理解できないことを納得し、解明は不可能であると究明したことにする。
徐々に魔力が回復していき、卵子の中にパンパンに詰まっている精霊力と反発し合い出した。
こういうのは上手いこと混ぜ合わせたら新たな力に昇華するはずなので早速同量ずつ混ぜ合わせようとするが、なにぶん精霊力の質が高過ぎて、そして魔力の質が低過ぎて、一向に混じり合う気配がない。
この分ではこれ以上試行錯誤しても無駄だと分かったので、卵子に溜まっている精霊力を子宮に流す。
そういえば他の卵子にも精霊力を詰め込んでいたのでそちらも遠隔操作で子宮に流す。
ゆっくり少しずつ、母体に異変が現れないように丁寧に精霊力を流す。
がしかし、卵子に詰まった精霊力がどんどん流れ出していくのが面白くて、つい残り全部の精霊力を一度に流してしまった。
例えるならシンクを掃除する時に排水口をツンツンしたら水が勢いよく吸い込まれていった、みたいな感じだ。
それにどうせファンタジーの鉄則、「母親は主人公に対しては理不尽に強い」が発揮されるのだろうからちょっと精霊力を流したところで母体の身体に異常はきたさない筈だ。
そう信じよう。
信じる者は救われる。
良い言葉だ。
俺は信じるから救ってくれよ、神様。
結局精霊力を全て母体に移したことで、己を含めた卵子からは魔力の気配のみが伝わってくる。
うむ、やはり
この世の全てにィッッ、感謝ァァァッッ!!
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