第14話 ドリンクバー

 街ブラもそこそこに、俺たちはランチタイムへと突入する。


「悪いな、千冬。結局、ファミレスになっちゃって」


「別に良いわよ。私、あまりファミレスに来たことが無いから、来てみたかったし」


「あれ? 友達と来ないの? 千冬って、友達ちゃんといるだろ?」


「いるけど……みんな、私が相手だと、変に気を遣うっていうか……」


「ああ、やっぱり。ていうか、千冬って、本当にお金持ちのお嬢様なの?」


「そこまでお金持ちって訳じゃないけど……まあ、一般の水準からしたら、上流の部類かもしれないわね」


「へぇ~」


「あまり言いたくないけど……まさか、うちの財産が目当てじゃないでしょうね?」


「いや、ぶっちゃけ、金にあまり興味はないない。千冬にしか興味がない」


「……バカじゃないの?」


 そう言って、千冬はメニュー表で顔を隠す。


「可愛いなぁ」


「いちいち言わないで」


「千冬、ドリンクバーいる?」


「え? そんなに飲まないけど……」


「でも、あまりファミレス来たこと無いんだろ? だったら、せっかくだし遊ぼうぜ」


「食べ物で遊ぶのは良くないわよ」


「飲み物だよ」


「うるさい!」


「じゃあ、俺はステーキのセットにするわ。千冬は?」


「わ、私は……どれが良いのかしら?」


「女子だと、このドリアがオススメかな?」


「そうなの?」


「でも、千冬って猫舌だったりする? さっきのコロッケでも、悶えるのが可愛かったし」


「変態。ていうか、あなたも普通に熱がっていたじゃない」


「じゃあ、ドリアにしておけよ」


「自分に都合の悪い言葉はスルーなのね……」


 千冬は呆れたようにため息を漏らす。


「じゃあ、店員さん呼ぶな」


 その後、俺たちは注文を済ませると、


「じゃあ、ドリンクバーに行くか」


「じゃあ、お先にどうぞ。私、荷物を見ているから」


「えっ? 一緒に行こうぜ。寂しいじゃん」


「でも……じゃあ、カバンを持って行かないと」


 そう言って、千冬は肩にカバンをかけた。


「今さらだけど、パイスラすごいな」


「バ、バカ、見ないで」


 ポカッと叩かれて、俺は笑いつつ、千冬とドリンクバーに来た。


「千冬って、飲み物は何が好きなの?」


「普段は、家で紅茶とか飲むけど」


「優雅だねぇ、さすがお嬢さま」


「バカにしているの?」


「いや、褒めているんだよ」


 そう言いながら、俺はメロンソーダを入れた。


「あ、そうだ。追加でアイスを注文して、ここに入れたら『クリームソーダ』になるぞ!」


「そしたら、せっかくのドリンクバーの意味がないじゃない」


「それもそうだな」


「全く……」


 千冬は呆れたように言いながら、アイスコーヒーを入れていた。


「へえ、良いチョイスだな。アイスコーヒー、千冬に似合うよ」


「あっそう。喜んで良いのか分からないけど」


「大人っぽい千冬に似合っているよ。ぶっちゃけ、高校生に見えないし」


「何よ、老けているって言いたいの?」


「いや、やっぱり、おっぱいメッチャでかいなって」


「バッグで殴っても良い?」


「ごめん、ごめん。もう、おっぱいには触れないから」


「本当かしらね? ちなみに、見るのも禁止だから。視線を感じた瞬間、目つぶしするわよ?」


「良いよ、お前に潰されるなら、本望だ」


「……へこたれない男ね」


 呆れたように言う千冬の後ろに付いて、俺はニヤニヤしながら席に戻った。




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