第7話
チェントロの町に入る前に、すらすけとすらみに並んで貰った。
「ナニヲ スルノ?」
「ぷるん?」
アルトは目をつむると、すらすけとすらみにそれぞれの手を置いて、イメージしながら呟いた。
「スライムマスタースキル発動、小型化!」
すらすけとすらみは小さくなった。
「ごめんね。二人とも。町でスライムを連れてたら、大騒ぎになっちゃうからね」
「ワカッタ」
「ぷるん」
アルトは小さなスライム二匹を大きなカバンのポケットにしまうと、冒険者ギルドに向かった。
町は混んでいた。アルトは人混みを通り抜ける時、人にぶつかってしまった。
「……痛いな!」
非難する声にアルトは反射的に謝った。
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」
アルトはぶつかった相手を見て、ことばを失った。
「なんだ、弱者のアルトくんじゃ無いか。まだ生きてたんだね。故郷には戻らないのかい?」
「……ユーナさん、皆さん……」
ユーナ達は冒険者ギルドから出てきたところだったようだ。
「一人で冒険者ギルドに行くなんて死ぬ気かい?」
「ヒトリ チガウ」
アルトのカバンのポケットから、小さなすらみが顔を出してユーナに抗議した。
「なんだい? これは……スライム!? こんな小さなスライムしか仲間にできなかったのかい?」
ユーナ達はアルトを嘲り笑った後に言った。
「あーあ。笑わせて貰ったよ、アルトくん。せいぜい死なないように気をつけるんだね」
「……ユーナさん達もお元気で」
アルトは去って行くユーナ達の背中をじっと見つめていた。
「アルト イイカエサナイ ナゼ?」
「すらみ、僕は大丈夫だよ。気にしても仕方ないことだし」
アルトは気を取り直して、冒険者ギルドの扉を開け中に入った。
「こんにちは」
「あら、アルトくん、こんにちは」
冒険者ギルドの主人、レイはそう言って手を振ってにこりと笑った。
「あの、スライムを倒してきました。これ、スライムのコアです」
「あらー。本当に倒してきたのね。ちょっと見せてね」
レイは腰をクネクネとくねらせながらコアの数を数えた。
「はい、ちゃんと依頼数倒したみたいね。ところで、カバンのポケットから覗いているのは仲間のスライムちゃんかしら?」
「え!?」
アルトがカバンを見ると、ポケットからすらすけとすらみがレイを見つめていた。
「可愛いわねえ。でも、ちょっと両手で挟んだら潰れちゃいそう」
「やめてください、レイさん」
アルトはスライム達をかばうように、カバンを抱えた。
「冗談よ。可愛いわね、アルトくん」
「それで、パーティー登録はできるんですか?」
「うん、クエストをクリアしたし、大丈夫」
レイはそう言ってから、パーティーの登録書を奥から取り出してきた。
「これにパーティーの名前と、構成員の名前を書いて頂戴」
「はい」
アルトは自分の名前を書いてから、パーティーの名前を考えて、それを書いた。
「……スライムマスター、うん、まあいいんじゃない」
レイはパーティー登録書を受け取り、分厚いファイルに閉じた。
「これでバーティー登録は終了。後ろに貼ってあるクエストから、どれでも好きなものを選んで頂戴」
「じゃあ、東の泉で薬草採取のクエストをお願いします」
「うん、分かったわ。初心者には丁度いいクエストだと思うわ」
レイは後ろの壁から薬草採取のクエストを剥がすと、スライムマスターと記載し挑戦中と書かれたファイルに挟んだ。
「それじゃ、期限は4日後。がんばってね」
「はい!」
アルト達は市場で薬草とパンと飲み物を買った。
アルトはチェントロの町を出ると、すらすけとすらみを元の大きさに戻し、東にある湖に向けて歩き出した。
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