3回戦

ある日の夕刻時…ピンポーン。玄関のチャイムが鳴り、妻が玄関のモニターを見ると見知らぬ女性の姿があった。


「はい…」


妻が玄関のドアを開けると、彼女は少し慌てた様子で菓子折りを手にしながら挨拶をする。


「突然の訪問ですみません、私は相原由美と言います。そちらの家の旦那である成夫さんに以前会社でお世話になった者です、彼にお礼を言いたくて、本日は挨拶をしに来ました」


大人しそうな雰囲気だが、根がしっかりしていると妻は感じた。


「主人ならまだ帰って来ていませんが…」

「それを承知で、本日はお伺いしました。社内ではとても評価されて、現在の部署でもかなりの高評価で係長として兼任されていて素晴らしい方です」

「そ…そうなの」


妻は愛想笑いしながら答える。


「ただ…私は少し前から彼の事で気になる箇所がありまして…相談に来ました」

「は、はあ…?」


約1時間後…


成夫が帰宅してきた。彼はリビングのテーブルに置いてある菓子折りに気付く。


「これは何?」

「今日、相原さんて言う女性が来て、貴方に渡して欲しいと言って来たのよ」

「相原…?」

「覚えて無いの?お世話になったと言ってたけど…」

「ああ、思い出した。相原胡桃ちゃんね」

「はあ?」

「女子小学生の子だよ。明るくて元気で活発的な子だよ」

「誰ソレ?って言うか、あんた…もしかして子供にも手を出しているの?」

「え…違うよ、相原って言うから、もしかして…と思って、違うの?」

「全然違うわよ」

「ああ…思い出した!相原雫ちゃんか⁈」

「誰なの?」

「女子中学生の子だよ、優しくて可愛い子なんだ」

「全然違うわよ」

「え…じゃあ、誰なの?」

「名前に『ゆ』が付いていたわよ」

「ああ…相原ゆかりちゃんか!」

「どんな子なの?」

「女子高生の子だよ、クール系の美少女なんだ」

「全然違うわよ。てか…さっきから未成年者ばかりじゃない」

「え…一体誰なの?」

「同じ職場で働いてたと言っていたわ」

「ソレを先に言ってよ。同じ職場内か…もしかして、相原優奈ちゃん?」


それを聞いた妻が溜息を吐いた。


「貴方と関係がある女性ってどれだけいるのよ?相原だけで、全く違う名前が次々と出て来ているじゃない!もう…本人に出て来てもらいましょう!」

「え…?」


そう言われて、リビングのドアが開いて由美が震えながら涙を堪えて立っていた。


「係長ってそう言う人だったのですね…」

「まあ、これがウチの主人なのよ。少しは分かった?」

「職場にいる時から、疑惑があったので確認の為に本日お邪魔させてもらいましたが、貴方の潔白を証明しようと思いましたが残念です。もう…二度と私には近付かないでください!」


彼女はそう言って立ち去ろうとした。


「ご…ごめん、悪気は無かったんだ。許してくれ!」


そう言うと彼女は足を止めて成夫を見る。


「許してあげても良いですが…せめて私の名前くらいは思い出してください。そうすれば考え直しますわ」

「え…と、ゴメン誰だっけ?どうでも良い事って直ぐに忘れてしまうんだ。ハハハ」

「最低!」


パシンッ!


彼女は成夫の頰を引っ叩いて、立ち去って行った。

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