発見!?

「全部片付いたみたいね。じゃ、パパっと調べちゃおう」


 カリンの声を合図に、それぞれ地面や壁などを調べ始める。


「頼むからそろそろあってくれよ」


 壁や地面の割れ目、ニョキっと生え出たような様々な大きさの石柱のそばなど、タフィは隠し場所になりそうなところを片っ端から調べていく。


「ないなぁ……あれ?」


 タフィ同様、隠し場所になりそうなところを丹念に探していたボイヤーは、キノコのように上部が大きく膨らんだ、高さ1メートルほどの石柱を発見した。


「なんかこれ怪しいなぁ……」


 明らかに何かが載っているような見た目だが、つなぎ目のようなものはなく、触った感じも、膨らんだ部分と柱の部分とで完全に一体化していた。


「……とりあえず、2人を呼ぼう。兄やーん、カリン姉さーん、ちょっと来てくださーい」


 ボイヤーが大声で呼ぶと、2人はすぐに駆け付けた。


「どうしたボイヤー。なんか、見つけたのか?」


「兄やん、これちょっと怪しくないですか?」


「どれどれ」


 タフィはキノコっぽい形の石柱をじっと見た。


「確かに怪しいな」


「でしょ」


「『でしょ』って、そんな無駄な確認はいいから、とっとと調べるよ。タフィ、上の部分を取りたいから、ちょっと柱のこの辺を打ってくんない」


 カリンはボイヤーにツッコミを入れつつ、タフィに膨らんだ部分の下を打つよう指示を出した。


「おう」


 タフィは足を広げて腰を落とすと、直径20センチほどの石柱をバットで打ち壊した。


 すると膨らんだ部分がドスンと落ち、その衝撃でひび割れができて、そこから木目のようなものが顔を覗かせた。


「これ、ビンゴなんじゃないのぉ。ボイヤー、ちょっとチョップしてみて」


「はい」


 ボイヤーは真っ二つにしてしまわないよう、力加減に気をつけながらチョップをすると、うまい具合に石が砕け落ち、中から40センチほどの大きさの平たい木箱が姿を現した。


「おっ、出た出た、絶対これじゃん。……あれ? 開かねぇ」


 タフィは興奮した様子で中身を確認しようとしたが、箱は開かなかった。


「あんたねぇ、その手の箱が簡単に開くわけないでしょ。ほら、貸してみ」


「ほい」


 カリンはタフィから木箱を受け取ると、鍵穴らしき場所に針金を突っ込んでガチャガチャといじり始めた。


「こういうのを開けるにはコツがいるのよ……ほら、開いた。……ビンゴ」


 箱を開けると、全員の期待どおり、中には丁寧に布で包まれた包丁が入っていた。


「あったぁ!」


 タフィは思わず叫んだ。


「やりましたね」


「おう」


 タフィとボイヤーは喜びのハイタッチを交わした。


「はいはい、喜ぶのはそれくらいにして、さっさとここを出るよ」


 この後、帰り道で数体のモンスターを撃破し、タフィの初ダンジョン探索は無事終了したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る