Sランク冒険者であり……

 三人で王都観光を楽しんで二日が経つ。今日は、ギルドマスターが僕の推薦人として稽古をつけてくれる人との約束の日だ。


 そして、今僕らがいるのは人混み多い王都には似合わない緑豊かな場所だ。少しだけれど、僕の故郷にも似ている気がする。


「ここまっすぐな気がするー」


 この森(?)はダンジョンかと思えるほど広く、現在道に迷っている途中だが、ミアの勘を頼りに進んでいる。

 邪竜の手も借りたいってやつだね。


『お姉ちゃんの勘、すごい?』


 僕の頭の上から、スライム状態のリータが尋ねる。


「うん、ミアの勘はすごいよ。道案内はいつもミアがやってるしね」

「ライト、方向音痴でいつも道に迷ってるもんね」

「そっ、そんなことないよ!」

「ほら、前なんか宿屋の中で迷ってたことも――」

「わー! わー! 言わなくていいの!!」


 風で騒めく木々と一緒に僕は叫ぶ。


 その後も歩みを進めていると、ミアが走り出した。

 僕も後を追い、鬱蒼としている草をかき分け、光のさす方に進む。搔き分ける田崎には、煙突が特徴的な一軒の家が現れた。


「あれがそうなのかな?」

『ん、誰か来るよ』


 家の扉が開くと、そこから腰まで伸ばした髪をなびかせる金髪碧眼の女性が現れた。

 とても若く見え、耳が尖っていることから、エルフという種族だとすぐにわかった。


「まさかこんなに早く辿り着くなんて思ってなかったですよ! みんなこんにちは」


 物腰柔らかで、どこか高級感のある佇まいをしている。……どこかで見たような気がするけど、誰だったかなぁ……。


「あ、僕はライトと申します!」

「私はミアで〜す!」

「リータ」


 リータも一旦人間の姿に戻り、挨拶をする。


「ワタクシはフェリーチェ=ジャーダと申します。今はSランク冒険者として働いています」

「フェリーチェ……ジェーダ……は、ま、まさか……」


 何かの因果と思えられる。

 ついこの前会ったあの魔王軍幹部。そして、僕の予想が外れていなければこの人……いや、このお方は……


「勇者パーティーの内の一員……世界樹使いのフェリーチェ!?」

「ふふ、当たりですよ」


 ギルドマスター……なんて人を推薦人にしてるんですかっ!?!?

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