収納拡大

「むぅ……! ライトっ、一緒に倒すんじゃなかったの!?」


 頰をプクーっと膨らませながら僕に近寄ってくるミア。


「ご、ごめん……。まさかこんなに威力が上がっているとは思わなかった……」

「今日の夜ご飯いっぱい食べさせてくれたら許す」

「わ、わかったよ。今日は豪勢な食事にするよ……」


 と、そんなこと言っている場合ではない。


「一旦それは置いといて……この右腕何かわかる!? 僕も竜になるの!!?」

「うーん……? これ、私だね」

「んん? ドユコト?」

「私の力……っていうかなんだろう、借りてる? う〜ん……説明しづらい」


 もしかしたら僕に目覚めた新しいスキルなのだろうか? 考えてもわからなさそうだなぁ。


「あ、直った」


 パキパキと音を鳴らしながら、いつもの僕の腕に戻った。


「まあ何はともあれ、ワイバーンの初撃破やったー!」

「よいしょ〜!」

「……でも、このワイバーンどうしよう。僕解体とかできないし……」

「全部壊して持ってく?」


 手から、雷を出している青黒い球をワイバーンに向けながらそう言うミア。


「ストップストップ! ワイバーンのお肉ってすっごく美味しいんだ!」

「っ! 勿体無いね! 全部持って帰ろ!!」

「でもどうやって持って行こうか……」

「あ、ライトが使える固有スキルは?」

「【収納ストレージ】かぁ……。でもあれ、薬草ぐらいしか入らなかったんだよねぇ……」


 あ、でももしかしたら、僕が元々使えていた固有スキルもレベルアップしているかもしれない。

 試す価値大有りだ。


「一回試してみるよ。すーはー……【収納ストレージ】!」


 ワイバーン一の鱗一つ余すことなく収納できた。


「おおっ! できた! ミア、できたよ!!」

「すご〜〜い!!」

「嗚呼……夜ご飯の献立がどんどん浮かんでくる……。まずは何から作ろっかな〜♪」

「美味しい夜ご飯……沢山……じゅるり」


 ――この時、僕は夜ご飯のことしか考えておらず、『Eランク冒険者がワイバーンを倒した』という前代未聞なことをすっかり忘れてしまっていたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る